2025年5月 紙類通関統計速報
2025年5月 紙類通関統計原本等(組合員限る)
紙類紙類海外動向レポート
2025年第4号 2025年7月
Contents
海外動向トピックス
欧州市況(6月度)
北米市況(6月度)
中国・香港市況(6月度)
【統計】4月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】4月 米国輸入状況
【資料】The Great Trade Hack トランプ貿易戦争の失敗と世界の動き
海外情報トピックス
*ベトナムにおける再生段原紙の増産の動き
ベトナム北部では、旧式で小規模な製紙マシンを使用して低品質の段ボール原紙や家庭用紙を生産している多くの国内メーカーが、政府の環境基準を満たさない生産を行っていることが問題となっている。この状況に対し、ベトナム製紙連合会は、2024年度末を期限として、約200社(約100万トン)の生産設備の廃止を地方政府に命じた。この動きにより、特に北部地域で再生段原紙(中芯)の供給が急激にタイトになり、輸入紙の増加とともに新マシンの増設計画が加速している。
具体的な増産計画として、Toan Cau Paper社はHai Duong省の既存工場に新たな再生段原紙のマシンを導入し、2026年中の稼働を予定している。この新マシンは年産10万トンの生産能力を持ち、主に米坪60-120gsmの中芯を生産する。また、KORO Vietnam Paper Join StockもThanh Hoa省の工場に新マシンを増設し、年産10万トンの再生中芯を生産する計画である。
さらに、Miza Corp.はThanh Hoa省Nghi Son工場で年産14万トンの再生段原紙の建設を進めており、今年後半の稼働を予定している。GDT Paper Joint Stock Co.もNam Dinh省Bao Minh工業団地に年産30万トンの新マシンを導入し、2026年の稼働を目指している。
これらの動きは、環境基準を満たさない旧式設備の廃止に伴う供給不足を補うためのものであり、ベトナムの製紙業界における生産設備の更新と増産計画が活発に進められていることを示している。
*マレーシア;段原紙供給過剰による生産削減の動き
・供給過剰の背景
2020年以降、マレーシアでは約310万トンの再生段原紙の新マシンが導入され、国内生産能力が2019年度比で約3倍に拡大している。この急激な生産能力の増加は、中国が自国での古紙輸入を禁止したことを契機に、中国の大手段原紙メーカーがマレーシアを含む東南アジア諸国に生産拠点を設けたことが一因である。
・市場価格の下落
生産能力の急増により、マレーシア及び周辺地域での段原紙の供給が過剰となり、製品の市場価格が下落している。価格の下落は、メーカーの収益性を圧迫し、業績の悪化を招いている。
・原材料価格の高騰
中国の古紙輸入禁止により、古紙(OCC、ONP)の価格が高騰している。原材料費の上昇は、製造コストの増加をもたらし、メーカーの利益をさらに圧迫している。
・メーカーの生産停止
市況の低迷により、マレーシアの段原紙メーカーは生産停止を余儀なくされている。例えば、Pascorp Paper Industriesは2025年8月に生産を永続的に休止することを発表している。他にも、マレーシア唯一の新聞用紙メーカーで中芯も併抄するAHP(Asian Honour Paper)や段原紙メーカーのUPP Pulp & Paper(M)などのメーカーが昨年後半に生産停止を行なっており、業界全体でこのところ生産停止が相次いでいる。
これらの要因が重なり、マレーシアの段原紙市場は供給過剰による深刻な市況悪化に直面しており、メーカーは生産停止や事業ポートフォリオの見直しを迫られている。
北米市況
[新聞用紙]
北米市場の新聞用紙の需要は、1-2月の当初輸入関税懸念による前倒し需要から、徐々に従来の脆弱な需要トレンドに戻りつつある。全出荷に対し極めて高い比率の輸出が、本年1-4月では前年比▲15%近く減少しており、北米の需給バランス構造が崩れつつある。関税問題で応酬が激しさを増す中国向け、また欧州向けの輸出が大幅減となっている。本年度の北米市場の需要は同▲14-5%減と予想されており、需給バランスを保つには本年度は更に40万㌧程度生産削減が必要との見方がある。
[上質紙]
輸入関税の影響が不確実な中、輸入品中心に在庫確保による需要が進み、1Qは北米メーカーの出荷が同▲5.6%に留まる一方で、輸入が同+42.2%となった。北米メーカーの出荷は低調だが、IP/Georgetown工場(30万㌧)の生産停止で供給状況はタイトで、4月の生産稼働率は91%に上昇した。年初打ち出された価格は、4月までに$40-受け入れられた。4月以降ユーザーには様子見の姿勢が広がり、市場は幾分硬直気味である。夏の非需要期に向い、荷動きの鈍化が懸念される。
[コート紙]
輸入関税絡みの先行き市況への懸念から、1Qは在庫積み増し需要が見られ、特に3月は上質コート紙の輸入が、過去3か月の平均よりも50%も増加した。国内メーカーからの出荷は依然低調だが、Sappi/Somerset工場2号機(24万㌧)等の大幅な削減により、供給は概ねタイトである。米㌦安で輸入紙には値上げ圧力がかかりやすくなっていること、また7月の郵便料金の再値上げで、カタログ・広告等の需要への影響が懸念され、今後の動向に注視が必要である。
[中質紙]
1Qは需要が好調に推移した。欧州が中心となる輸入紙の比率は低く、また出荷の多くは実質関税ゼロのカナダの工場からとなるため、輸入関税の影響は印刷用紙で最も受けづらく、比較的安定した市況が期待できる品種である。
[段原紙]
米国の1Qの段ボール実出荷量は前年比▲2.1%の減少となった。段原紙の生産はこの間微増だが(+0.4%)、輸出は減少に転じており(▲7.7%)、特に米国との貿易摩擦が増大している中国向けは約▲40%と低調である。関税問題の今後の行方は不透明で、輸出の減少も懸念材料となり、供給過多が市場では負担となってきている。今年に入り8月までに合計230万㌧程度の段原紙の生産停止が実施、または予定されており、今後の需給変化への対応には注視が必要である。
欧州市況
[新聞用紙]
5月の新聞用紙価格は2Q契約価格が維持され、前月と横ばいとなった。需要に回復は見られず、メーカーの稼働率も低迷しているため、欧州メーカーは古紙、電力等コスト増を価格への転嫁が必要だが、3Qの値上げの意向を積極的に打診しづらい状況である。
[非塗工上質紙]
メーカーの値上げも、4月は結果的に値下がりに終わり、交渉は5月にも持ち越されたが、5月も前月横ばいとなった。コピー用紙の需要は春以降低調で、オフセット印刷用も教育分野の需要が続かず厳しい状況。輸入関税交渉の不透明さが市場に影響し、アジアのメーカーが積極的に販売を行なっている。
[コート紙]
4月以降のメーカーの価格修正は断念となり、交渉は5月に持ち越されたが、5月もなんとか横ばいで留まった。紙需要は低調で、メーカーの稼働率は依然として低調である。中国市場ではパルプ価格が下落し、その影響が欧州市場にも及び始めている。Kabel Premiumが倒産し、投資先も見通しが立たず生産は停止となった。ロトグラビア印刷用途の欧州メーカーとしてはUPMのみが残る。
[段原紙]
テストライナーはドイツ・フランス市場で€40-50の値上げが受け入れられたが、他市場では概ね横ばいとなった。
クラフトライナーの値上げ交渉は持ち越し。南欧市場ではドル安が影響し、北米品の値上げ姿勢は消極的なため、欧州市場の値上げ交渉への影響が懸念される。新マシンの稼働で今春以降年産150万㌧弱が追加され、市況軟化の加速が懸念される
中国・香港市況
[上質紙]
中国市場では春先の出版用途の需要が落ち着き、全体的に低調な状況である。紙商は在庫過多に悩んでおり、安値販売が見られる。パルプ価格の下落により、市況にも先安感が広がっている。
香港市場も同様に低迷しており、パルプ価格の下落と供給能力の増加が予想されていることから、市場価格も低位に推移することが見込まれる。
[コート紙]
中国市場では印刷会社が当面必要な分だけを購入しているため、紙商の在庫は高め基調となっている。パルプ価格の下落により、製品価格も下方圧力が強くなっている。
香港市場でも紙需要とパルプ価格が低迷しており、今後夏場の非需要期に向い、需要の回復は厳しいと見込まれている。値上げを模索するメーカーもあるが、需要の回復が見られず、受け入れは難しい状況である。
[板紙]
中国市場では段原紙の需要が依然低迷しており、特値対応も見受けられるが荷動きに繋がっていない。5月に入り、米中間の関税交渉で暫定的に緩和されたことにより、在庫補充の動きも見られた。古紙買い取り価格の上昇で、製品価格への転嫁も始まったが、実需の盛り上がりには繋がらず、価格は横ばい基調で進んでいる。
香港及びその他アジア市場では、アイボリーの価格が過去最低水準で推移しており、白板紙は古紙価格の上昇もあり若干反発したが、需要の低迷は相変わらず続いている。
【統計】4月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2025年4月の紙・板紙合計輸出は15万3,655トン(前年比11.2%減)、輸入は7万1,113トン(同4.5%増)となった。国内需要は161万421トン(同0.8%減)となった。
内需とともに輸出が減少した。

【統計】4月 米国輸入状況
米国の2025年4月の紙・板紙の輸入は合計59万1,218トン(前年比6.9%増)、金額は6憶9,480.0万ドル(同14.8%増)となった。そのうち印刷用紙合計は25万82トン(同5.2%増)、金額は2億9,578万8千ドル(同11.3%増)となった。
同1-4月累計は紙・板紙合計で252万3,863トン(同9.3%増)、27億9,622万5千ドル(同10.3%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。
【資料】The Great Trade Hack トランプ貿易戦争の失敗と世界の動き
トランプ大統領就任後、関税の導入で各国との協議が継続され、今後の動向が懸念されるところ、本邦紙業界にも直接的、間接的な影響の可能性はあるが軽微にとどまるのではないかとの見方もある。
Richard Baldwin氏はThe Great Trade Hack: How Trump’s Trade War Fails and the World Moves onをCentre of Economic Policy Research(CEPR)から上梓した。
(抜粋)
そのなかで、米中の紛争は貿易戦争ではなく、米国の市場主導資本主義と中国の国家主導資本主義との相違によるシステム衝突であるとした。
また、米国は1980年代に自動車、半導体、鉄鋼の主要分野における同様の脅威を日本から受けたが、日本が重要な軍事同盟であり、極東における防壁であったことが違いであるとした。
そのうえで、米中システム衝突の解決策として次のように述べた。
- 現実的な目的 システムの変更ではなく達成可能な目標を定める。
- システムの相違を受け入れる 中国の経済モデルを認識し、消さない。
- 対話の機会を設ける 継続的な交渉の場をつくる
- 国内への投資 産業育成、革新、労働生産性の向上をはかる。
- 長期的な視点 世代を受け入れ、急な勝利を求めない。
本書は以下に公開されています。
日本紙類輸入組合公告

日本紙類輸出組合公告

2025年4月分 紙類通関統計月報(組合員限定)
2025年4月 紙類通関統計速報
2025年4月分 紙類通関統計原本等(組合員のみ)
紙類海外動向レポート
2025年第3号 2025年6月
Contents
海外動向トピックス
欧州市況(5月度)
北米市況(5月度)
中国・香港市況(5月度)
【統計】3月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】3月 米国輸入状況
【資料】2024年中国段ボール原紙新増設
海外情報トピックス
*北米における非塗工上質紙の生産削減
米国のPixelle Specialty Solutionsは、オハイオ州のChillicothe工場を閉鎖し、同工場での非塗工上質紙の生産を削減することを発表した。この工場では年間40万トンの非塗工上質紙が生産されており、北米市場における大幅な生産能力の削減となる。昨年末にはInternational PaperのGeorgetown工場(サウスカロライナ州)が閉鎖され、約30万トンの上質紙系の生産が削減されており、これに続く動きである。IP/Georgetownの減産により、北米の上質紙の供給は引き締まり、年初より価格上昇基調にあり、3-4月に累計で$40-の値上がりとなった。3月度の北米メーカーの稼働率は93%(昨年は88%)と急速に改善している。
北米市場の需給バランス改善が期待される一方で、関税問題は現在90日間の発動保留期間にあり、今後の進展は各国との交渉に委ねられているが、輸入品の供給に懸念をもたらす可能性があるため、即座に政府関係者と企業側は、Chillicothe工場の長期的な再建の道筋を探るべく、とりあえず閉鎖することを「一時停止」し、年末までは操業を継続することを、上記の発表から数日後に改めて発表しなおした。
北米の非塗工上質紙の生産量は、2023年度の630万トンから2024年度末には590万トンへと約5%削減となった。本年度は、IP/Georgetown工場の閉鎖(とPixelle/Chillicothe工場が年末までに閉鎖となれば)520万トン程度にまで減少する見込みである。今後の輸入関税の動向と北米メーカーの供給状況への注視が必要である。北米の上質紙メーカー毎の生産量は、Domtarが首位で195万トン(全体の37%)、Sylvamoが132万トン(25%)、PCAが50万トン(9%)、Pixelleが33万トン(6%)となっている。
*欧州市場における段原紙の新マシン稼働
オーストリアのHeinzelグループは、Laakirchen Papie工場での11号機を再生段原紙に転抄する計画を進めていた。当初は2023年半ばの稼働を予定していたが、コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などの影響で度々延期されていた。しかし、本年4月上旬にようやく稼働に漕ぎつけた。生産能力は当初の年産55万トンから47万トンに下方修正されたが、2026年度中にはフル生産を目指している。ターゲット市場はオーストリア、イタリア、ドイツ、ポーランドなどである。
欧州市場では、今年度中に複数の段原紙の新マシンの稼働が予定されており、市況の一層の軟化が懸念されている。フランスではNorske SkogのGolbey工場1号機が新聞用紙から転抄し、4月末に稼働した。また、イタリアのMondiのDuino工場も第2四半期中に稼働を控えている。また更に2026年以降に稼働が後ろ倒しとなっているものもあり、これにはDS Smith&IP新会社のPorcari工場(イタリア)/Eren Paper(親会社トルコModern Karton)のShotton工場(英国)/Hamburger Container(トルコ)/Stora EnsoのLangerbrugge工場(ベルギー)などが含まれる。
*欧州委員会(EC)によるEUDRの実施要項の簡素化
欧州委員会(EC)は、昨年12月30日に発令された森林破壊防止規制(EUDR)の実施を容易にするため、規制の簡素化を行った。ECはガイダンス文書と頻出質問事項を更新し、大企業がEU市場内で流通した商品を再輸入する際に、既存のデューデリジェンス報告書(DDS)を使用できることを認めた。また、輸入の都度DDSを提出するのではなく、年度ごとの提出を義務付けることや、サプライヤーから入手したDDSの参照番号を記載することで提出できることも認めた。これにより、企業側の管理コスト負担が約30%軽減できると期待されている。ECは最終的に実施細目を法制化し、各国ごとのカントリーベンチマーク制度を導入することを目指している。
*北米における段原紙の生産削減
北米における段ボールの需要は、2022年以降減少傾向にあり、今年に入り第1四半期も実出荷量で前年同期比▲2.1%と低調に推移している。この需要の低迷は、供給過多にある段原紙生産メーカーに大きな影響を与えている。
段ボールの需要減少に伴い、北米の段原紙生産能力はここにきて大幅に削減が行われている。2023年末から2025年8月までの約20か月間で、約300万トンの生産能力が削減される予定である。具体的には、2023年末にInternational Paper (IP)がテキサス州のOrange工場で80万トンの生産を停止、今年に入ってからIPはルイジアナ州のRed River工場でも80万トンの生産を3月に停止した。さらに、Griefがマサチューセッツ州のFitchburg工場で約10万トンの再生段原紙マシンを5月に停止する予定である。直近では、IPと並び世界最大手の段原紙メーカーSmurfit Westrockも、7月にテキサス州のForney工場で38.5万トンの再生段原紙の生産を停止、またGeorgia Pacific(GP)のジョージア州Ceder Springs工場でも、8月までにKLB/中芯合計102万トンの生産停止が発表された。
これらの生産能力削減は、段ボールの需要が低調であることに直接結びついており、メーカーは市場の実需に対応するために生産を調整している。段ボールの需要が回復する兆しが見られない中、段原紙の生産能力削減は今後も続く可能性がある。
北米市況
「新聞用紙」
北米市場の新聞用紙の需要は減少し、第1四半期の見かけの消費は前年比▲6.6%となった。
北米メーカーの生産量も減少しているが、輸出が全出荷の51.2%を占めており、輸出への依存度が依然として高い。カナダ品の輸入関税懸念は緩和され、供給リスクは減少したが、需要は依然低調である。2024年度の米国市場の需要は約90万㌧、そのうちカナダからの供給が半分を占める。輸出の減少が続けば更に生産能力の削減が必要となり、輸出動向に注視が必要。
[上質紙]
米国市場では輸入関税の影響で不確実性が高まり、第1四半期は輸入品で在庫確保が進んだ。第1四半期の需要は前年比▲0.6%で、輸入品は需要の15.2%を占めた。生産稼働率は急速に改善したが(3月は93%)、生産削減による供給の引き締まりが背景にある。値上げは3-4月で段階的に$40-程度受け入れられた。その後の価格修正の動きは見られない。
[コート紙]
コート紙の需要は依然として減少しており、カナダ・その他アジアからの輸入品への依存度は高い。北米メーカーの生産稼働率も改善しているが(3月は86~92%)、これも上質紙同様、生産能力の大幅削減によるもの。関税問題の影響は発動の保留後、現在一時的に小休止しているが、今後は為替の動向(ドル安傾向)が輸入品の価格に影響を与える可能性が大きい。早速欧州系メーカーは価格上乗せを発表、値上げ圧力が強まることを予想。
[中質紙]
第1四半期の需要は前年比▲0.3%で、好調だった昨年同期同様好調である。カナダ工場からの出荷が80%以上を占め、その他の輸入品の割合は低く、関税問題の影響は受けづらい。他の印刷用紙からの代替需要も期待され、比較的安定した市況を予想する。
[段原紙]
米国の段ボール実出荷量は第1四半期が前年比▲2.1%と減少となった。段原紙の生産はこの間微増だが(+0.6%)、輸出は減少しており(▲7.7%)、特にメキシコと中国向けは低調。
段原紙の値上げは2023年後半以降累計$120-に及ぶが、ユーザー側の抵抗が強くなり、段ボールへの価格転嫁は進んでいない。段原紙の供給過多は負荷となっており、ここにきて急速に生産能力の削減が進められており、今後の需要動向と供給環境に注視が必要。
欧州市況
[新聞用紙]
第2四半期の契約交渉では、価格は第1四半期比でほぼ横ばいの決着となった。欧州メーカーは原燃料等コストアップ分を価格に転嫁しようと試みたが、低調な需要とカナダ品の攻勢等により、方針の変更を余儀なくされている。
[非塗工上質紙]
BurgoやSappiなどが4月以降の価格引き上げを打ち出したが、需要の低迷、供給過多に加えて、米国の追加輸入関税発動による市況への更なる影響を懸念し、ユーザー側でも様子見の姿勢が窺われるようになった。主要市場で逆に価格は下落しており、値上げは5月に持ち越されるも、市況は低調で非常に厳しい状況が予想される。
[コート紙]
Burgo、Lecta、Sappiなどが4月分以降の価格修正を発表したが、需要は依然低調で、値上げは事実上断念せざるを得ない状況となった。4月度はなんとか価格は現状維持に留まった。
メーカーの稼働率はコート紙全体で概ね75%前後で推移している。
Kabel Premiumが再建を目指し生産を再開したが、売却先の有無が注目されている。
[段原紙]
テストライナーはスペイン・英国等で3-4月になり今年初めて値上げが実現したが、ドイツ、フランスでは2月に続く4月の再値上げはユーザーの抵抗で難しい状況で、持ち越しとなった。クラフトライナーも値上げを表明しているが、南欧地区でドル安を背景に北米品が値上げを実施しておらず、こちらも持ち越しとなった。
中国・香港市況
[印刷用紙]
中国市場のコート紙は、雑誌・カタログの需要は減少が続いている。米中貿易摩擦による相互追加関税の発動が、市場にどのような影響を及ぼすかは全く不透明であり、市場は一様に様子見ムードが広がっている。紙市況が依然として低調で、パルプ価格にも下落の兆候が表れていることから、現状値上げが難しく、逆にユーザーからの値下げ要求に応じるケースも見られる。香港市場では、旧正月明けに値上げアナウンスがされたが、需要低迷が続き、ユーザーからの値下げ要求が強まった。パルプ価格も下落の兆しがあり、市場価格は下振れしやすくなっている。米国の関税問題の影響で、注文取り止めも出始め、需要の一層の減少が深刻である。
中国市場の上質紙は、印刷需要がデジタル化の影響で緩やかに減少が続いている。構造的な市況低迷に加え、米中貿易摩擦が印刷物の輸出案件にも影響しており、更に低調な状況が加速している。国内パルプの小売価格、輸入パルプともに価格に下落が見られ、平均価格は概ね軟化傾向にある。香港市場では、春先の出版物関連の需要も最盛期であるにも関わらず低調で、荷動きも停滞している。メーカー・流通業者ともに、受注を削減、在庫の削減を優先せざるを得ない状況で、価格は更に下落している。
[段原紙及び板紙]
中国市場では、4月前半に古紙パルプの価格が上昇し、中芯・ライナーの値上げが各メーカーから発表された。しかし、米中貿易摩擦の影響から段ボール需要は低迷しており、ユーザー側が積極的に在庫の積み増しをしないため、荷動きは非常に低調で、段原紙の価格は更に下落となった。追加関税の行方により、今後の市場動向には依然として不確定要素が多く、心理的な不安から、在庫削減を優先する傾向にあるため、市況は暫く軟化基調に推移すると予想される。
香港市場では、アイボリーの需要が減少、供給過多となっているため、サプライヤーはユーザーからの値下げ要求に応じざるを得ない状況である。流通側は米中貿易摩擦の影響で、在庫削減を優先するため、暫く値下がり基調が続く見通しである。白板紙はアイボリー市況と同様、旧正月明け以降価格は下落しており、4月に更に大きく下落となった。原材料の古紙は比較的安定した価格推移となっているが、販売価格の引き上げは難しく、メーカーの採算は一層厳しくなっている。
【統計】3月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2025年3月の紙・板紙合計輸出は18万3,765トン(前年比0.7%増)、輸入は7万2,779トン(同9.2%増)となった。国内需要は163万2,701トン(同0.8%減)となった。
内需の減少で輸出、輸入ともに増加した。

【統計】3月 米国輸入状況
米国の2025年3月の紙・板紙の輸入は合計74万8,630トン(前年比22.5%減)、金額は8憶859万5千ドル(同24.8%増)となった。そのうち印刷用紙合計は30万7,013トン(同22.7%増)、金額は3億4,121.0万ドル(同22.1%増)となった。
同1-3月累計は紙・板紙合計で174万9,679トン(同10.4%増)、21億4,257万1千ドル(同11.1%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。
【資料】2024年中国段ボール原紙新増設
単純に昨年の生産量の7-9%の増産があることとなるが、稼働率から考えれば、生産能力としてはそれ以上のところに、更に増産となる。ライナーでは大手メーカーは幾分影を潜め、新規企業による参入、増産もあるとみられる。
