2025年7月 紙類通関統計速報
2025年7月分 紙類通関統計原本等(組合員に限る)
紙類紙類海外動向レポート
2025年第6号 2025年9月
Contents
海外動向トピックス
北米市況(8月度) 欧州市況(8月度)
中国・香港・東南アジア市況(8月度)
【統計】5月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】5月 米国輸入状況
【資料】フィリピン中芯原紙輸入統計 【資料】第9回アフリカ開発会議(TICAD9)
海外情報トピックス
*インドネシアAPP傘下工場でライナー新マシンテスト生産
インドネシアの大手製紙メーカーAPPは、西ジャワ州のIKPPカラワン工場において、ライナーボード新マシンのテスト生産を開始した。マシン幅8.46m、速度1,450m/分で、年間70万トンの高品質ライナーボードを生産予定。テスト生産期間は約6か月。APPのインドネシアにおける段原紙の生産能力は約200万トンで、そのうちライナーは約半分を占めている。新マシンの稼働により、ライナーの生産能力は170万トン程度に増加となる。東南アジア市場では、供給過多と中国市場の不振により市況が低迷しており、更なる市況の軟化が懸念される。
*インド政府 インドネシアからの輸入白板紙にダンピングの実態調査を開始
インド政府の商工省傘下の貿易救済総局(DGTR)は、インドネシアから輸入されるバージンパルプベースの多層抄き白板紙に対してダンピングの疑いで調査を開始した。昨年10月には、中国とチリからの同品目の輸入についても調査を行っており、今回の調査はそれに続くもの。インドネシアのAPRIL社は2024年1月にスマトラ島ケリンチ工場で新しいFBB製造マシンを稼働させ、インドへの輸出が急増している。2025年までにインドネシアはスウェーデンを抜いてインドへの輸出第2位となった。インド製紙同業会(IPMA)は、インドネシアの国内市場での販売価格がインド国内メーカーの生産コストを下回っており、輸入増加がインドの製紙業界に甚大な被害を与えていると主張している。
*中国パルプメーカーによるフラッフパルプ生産能力の拡大
米中間の関税問題の応酬の影響から、中国が主に米国より輸入するオムツ用のフラッフパルプの輸入量が直近では急減しており、中国の紙パルプメーカーにフラッフパルプ生産への転換、あるいは新たな投資を進める動きが出始めている。(注;米国政府はブラジルに対し追加関税分を含む50%の関税の発動を主張していたが、後日パルプについては40%の追加分に関しては除外されることが判明。)
中国の海貨統計(GACC=General Administration of Customs)によると、2024年度の中国が米国より輸入したフラッフパルプの総数量は104万㌧であったが、輸入関税及び報復関税の応酬が高まる直近の、今年1-4月の月間平均輸入数量が8万㌧であったのに対し、5月度は5.8万㌧、6月度は3.2万㌧と急減している。今後の供給への不安が、中国メーカーのフラッフパルプ国内生産への投資意欲を促しており、最近では次のような計画が明らかになっている。
1)山東銀河瑞雪紙業: 既存の非木材パルプラインを廃棄、新たに30万トンの木材パルプ生産設備を設置する計画。そのうち15万トンがフラッフパルプの予定。
2)岳陽紙業: グループ企業の湖南駿泰紙業を通じ、40万トンのNBKPラインのうち約5万トンをフラッフパルプに転換予定。
3)保定瑞豊紙業: 既存18万トンの機械パルプ設備を改修、約5万トンのフラッフパルプを生産予定。
4)四川環龍集団: 25万トンの竹パルプの生産ラインを新設、そのうち20万トン程度はフラッフパルプ生産予定。
5)山東華泰紙業: 今年4月に稼働した70万トンのLBKPラインの一部をフラッフパルプの生産に充てる。
これらにより、輸入依存を軽くし、国内でのフラッフパルプを生産により供給の安定化を図る意図がある。
*米国政府当局 ブラジルSuzano社の輸入コピー用紙に対するアンチダンピング税率見直しに仮裁定
米国商務省(DOC)は2025年7月10日に、ブラジルのSuzano社から輸入されるコピー用紙がダンピング販売されているとして、アンチダンピングの仮裁定を下した。この調査は、2023年3月から2024年2月末までの輸入実績を対象に、Suzanoのコピー用紙が市場の平均価格より14.42%低い価格で輸入されていると結論づけた。最終裁定は120日以内に下される予定。米国最大のコピー用紙メーカーDomtarの申立てを受けて行われたもの。Suzanoに2016年以来、22.16%のダンピング課税が適用されていたが、最近の状況に基づき見直しが求められた。2025年1月から6月までの米国市場の平均価格は$1,625/トンに対し、ブラジルからの輸入品の平均価格は$931/トン、その差は47%に拡大している。両国間の輸入関税の応酬に基づき、Suzanoには関税率50%に加え14%が上乗せされ、合計64%が課されることが結論付けられた。
北米市況(8月度)
[新聞用紙]
1Qの需要は好調だったが、2Qでは輸入関税交渉や在庫調整の影響で減速した。6月の需要は前年比で特に大幅に減少している。2025年度も前年比▲14%程度の減少が予測される。輸出は全需要の半分以上を占めるが、1-6月の輸出量もアジア、欧州、南米各主要市場向けが減少した。カナダのメーカーはインド、欧州で安値オファーを展開している。国内外の需要減少により、北米メーカーの生産稼働率も前年同月を下回った。一部メーカーはコスト高に直面し、価格修正を検討している。
[上質紙]
北米市場の上質紙需要は、1Qは輸入関税問題で輸入品中心に在庫が増加したが、2Qには関税交渉で市場が硬直し、荷動きは鈍化した。6月には需要が一時的に回復したが、7月以降は再び鈍化している。関税導入への備えから輸入品シェアがアップする一方、需要は低調で、北米域内メーカーの出荷は減少している。
IP/Georgetown工場の生産停止は供給を引き締めたが、需要減と輸入増の陰でその効果は薄れた。今後、Pixelleの生産停止、関税率の上昇による輸入の落ち着きなどで、北米メーカーの生産稼働率は更に上昇すると予想される。
米国市場の上質紙価格は年初に値上げされ5月から7月は変動がなく、年度後半から再値上げが予想される。
[コート紙]
1Qに輸入紙の在庫が増加したが、2Qになると関税交渉の延長により市場が硬直化し、2Qの輸入は前年比で▲13-14%減となった。6月の需要と輸入も低調。1-6月の累計では、コート紙全体で、需要と輸入が前年より減少したが、輸入の割合は依然として高い。景気低迷で広告紙の需要が減少し、北米メーカーの出荷も減少している。それでも北米メーカーの稼働率は改善しており、供給の引き締めが理由である。今後も夏の非需要期と郵便料金値上げで、需要の回復は難しい。在庫が積み増されており、市況は軟調な推移が予想される。
北米市場の価格は横ばいだが、欧州品の輸入関税15%が確定し、Sappi/UPMが価格転嫁を発表した。韓国メーカーの動向が注目される。
[段原紙]
2023年上半期、米国市場での段ボール出荷量は前年比▲2.3%の減少となり、減少率が加速している。特に6月は、季節的需要の発生遅れ、今後へのインフレ圧力で、消費者・企業ともに物品購入を控え、前年比▲4.6%と低調。段原紙メーカーの生産量も前年比▲3.0%減で、海外市場も低調で、段原紙輸出も大幅に減少している。今年後半も相互関税の影響でインフレ圧力が懸念され、段ボール消費は低調に推移の見込み。需給対策は急務で、今年3月以降複数の工場で、約240万トンの段原紙生産が停止されている。
欧州市況(8月度)
[新聞用紙]
3Qの新聞用紙価格は、メーカー各社は価格下落要求に応じ、下方傾向での推移が予想される。需要は概ね想定内であるが、北米市場で苦戦するカナダのメーカーが、欧州市場で柔軟な価格対応を展開しており、概ね市況は軟調である。フランスを除く欧州市場では、€5-20の価格下落が見込まれる。英国では£15-20の下落が予想される。
[印刷用紙/中質系雑誌用紙]
SC紙の需要は低調で供給過多が続いており、市場価格は下方圧力を受けている。UPMのEttringen工場の生産停止予定があるが、これまで実行に関して具体的な発表はない。一方SappiはKirkniemi工場で非塗工中質紙の生産を開始しており、今後の市場の見通しは不透明である。
[非塗工上質紙]
上質紙の価格は6月から下落が始まり、7月ではさらに進行している。特にコピー用紙ではアジアメーカーの積極的な販売が供給過多を招き、欧州市場の広くで価格が下落している。ドイツ・フランス・英国などで特に価格の下落が顕著である。
[コート紙]
コート紙の価格下落は6月から始まり、7月に加速している。英国、ドイツ、南部欧州で価格が大幅に下落している。SappiのKirkniemi工場が非塗工中質紙への生産転換を発表したが、コート紙の供給過剰状態は依然続いており、市況の安定には生産能力の削減は必要である。
[段原紙]
テストライナーは、5月の値上げが7月には古紙価格の下落で元に戻り、4月以前の価格水準となった。注文促進のため値下げやリベートが見られるが、夏の非需要期で効果は限定的。英国とスペインは堅調、イタリアでは新マシン稼働で価格がさらに下落。クラフトライナーは比較的安定しているが、再生品ライナーの市況軟化の影響で、価格が崩れも一部で見られる。イタリアでは、ドル安で北米品が欧州の主要メーカーよりも安値で販売されている。
中国・香港・東南アジア市況(8月度)
[印刷用紙]
中国市場のコート紙は、印刷会社は必要な分のみ購入しており、依然として紙商の在庫は高止まりである。需要の低迷、パルプ価格の下落で、市場価格に改善は見られない。メーカー側は値上げを意図するものの、需要が脆弱で値上げに正当な理由は乏しく、実勢価格はさらに下落している。
香港市場も、需要の低迷により市況は軟調に推移している。中国メーカーが7月生産から値下げを行っており、夏場の非需要期を通じて価格の下落は続くと予想。米国向け出版物用は、関税政策がはっきりするまでは取引が保留され、需要の動きに影響を与えている。
中国市場の上質紙は、出版用途の需要が低調で、全体的に荷動きは鈍い。紙商は過剰な在庫を抱え、安値での在庫投げ売りが見られる。パルプ価格の下落により、先安感が広がっている。需要の回復は見られず、しばらく様子見の状況が予想される。価格戦争を食い止めるべく、中国政府は過剰生産を改める政策を打ち出し、正常な価格レベルに戻そうという雰囲気が業界にも広がっている。8月に大手製紙メーカーが値上げをアナウンスしており、今後の市場動向が注目される。
香港市場の上質紙は、6月以降も荷動きは鈍化している。パルプ価格の下落と中国メーカーの生産増強で、供給余力がますます拡大している。中国メーカーは7月生産から値下げを行っており、夏の非需要期を越えて市況が軟化することが予想される。
[板紙]
中国市場の7月の段原紙市場は、メーカーが価格復元を試みるも、低調な需要により価格はやや下落となった。大手メーカーの価格政策も様々で、中下旬には中小メーカーも値上げに追随する動きが見られた。段ボールメーカーの稼働率は50-70%で推移しており、在庫消化が遅れユーザーの購買意欲も依然として低調である。原料古紙の価格は堅調に推移しているため、コスト上昇が段原紙メーカーの利益を圧迫している。
【統計】6月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2025年6月の紙・板紙合計輸出は15万1,259トン(前年比11.6%減)、輸入は6万5,176トン(同6.8%増)となった。国内需要は147万6,406トン(同3.7%減)となった。
段ボール原紙、紙器用板紙は内需が増加。

【統計】6月 米国輸入状況
米国の2025年6月の紙・板紙の輸入は合計59万2,144トン(前年比4.4%減)、金額は6憶3,736万2千ドル(同7.4%減)となった。そのうち印刷用紙合計は25万7,542トン(同3.8%減)、金額は2億7,598万5千ドル(同8.8%減)と減少が続いた。
同1-6月累計は紙・板紙合計で370万1,069トン(同4.4%増)、40億7,568万2千ドル(同4.5%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。
【資料】フィリピン中芯原紙輸入統計
フィリピン政府は2025年8月1日、中芯原紙(HS4805.19.10,90および4805.12.00)輸入に対しトン当たり3,438フィリピンペソ(日本円約9,000円)を課す200日間のセーフガード措置を発令した。
2024年の当該輸入は合計17万1,386トン(前年比58%増)、金額は7,896.0万ドル(同66%増)で、日本から6万9,961トン(同42%増)、2,571万6千ドル(同34%増)、中国から5万4,378トン(同13倍増)、3,226万7千ドル(同10倍増)などとなった。

【資料】第9回アフリカ開発会議(TICAD9)
2025年8月20-22日 パシフィコ横浜
フォーラム「グローバルな援助構造とアフリカにおける課題」基調講演で西尾昭彦
世界銀行 開発金融担当副総裁は、援助提供者の過密化、ドナー資金によるプロジェクトの細分化、ドナー拠出金の低いレバレッジ、そして被援助国政府の迂回についての考察を述べた。

参考文献
21st-Century Africa: Governance and Growth https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/03bdf5e3-daba-404a-a638-25c5511c2376
Africa in the New Trade Environment: Market Access in Troubled Times https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/9c85ac1f-29cd-57a6-b3c2-ec5d50136bc8
Industrialization in Sub-Saharan Africa: Seizing Opportunities in Global Value Chains https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/a7fcc389-e024-5a8a-841c-4b32ad1b4ffe
2025年1-6月 紙類通関統計月報(組合員限定)
2025年6月分 紙類通関統計月報(組合員限定)
2025年6月 紙類通関統計速報
2025年6月分 紙類通関統計原本等(組合員に限る)
紙類海外動向レポート
2025年第5号 2025年8月
Contents
海外動向トピックス
欧州市況(7月度)
北米市況(7月度)
中国・香港・東南アジア市況(7月度)
【統計】5月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】5月 米国輸入状況
【資料】米国関税動向
海外情報トピックス
*Suzano社 K-Cとの製造販売の合弁会社を欧州に設立 ティッシュ事業を世界的に拡大
Suzanoは、世界最大のパルプメーカーとして、Kimberly-Clark (K-C)との合弁会社を設立し、ティッシュ事業のグローバル展開を加速する。合弁会社は約34億米ドルを投資し、2026年半ばまでに欧州に設立される予定であり、本社はオランダに置かれる。Suzanoが51%、K-Cが49%の株式を保有する。
Suzanoは、K-Cの生産能力を活用し、世界市場へのアクセスを強化する。特に、K-Cの14か国22の生産拠点を活用し、欧州を含む主要市場でのプレゼンスを拡大する。また、ユーカリパルプの安定供給により、生産コストを低減し、競争力を強化する。
K-Cにとっても、この合弁会社は戦略的なメリットをもたらし、米国、メキシコ、韓国、バーレーンなどの市場に集中することが可能になる。これにより、効率的な資源配分と市場戦略の最適化が期待される。
この合弁会社は、SuzanoとK-C双方にとってティッシュ事業の世界的な拡大と効率化を実現する重要なステップとなる。
*インド政府 輸入紙に対して品質管理基準を強化の方向で検討
インド政府は、輸入書籍印刷用紙に対する品質管理基準(QCO)の導入を検討している。これにより、海外サプライヤーはインドの認証要件を満たすことが求められる。すべての書籍・印刷用紙はインド企画局(BIS)の認証を取得する必要がある。主に韓国、タイ、中国、インドネシアからの低品質な輸入品が対象となり、国内市場への影響が懸念されている。過去には、安価な紙板紙の輸入が国内製紙業界に打撃を与え、セーフガードやアンチダンピングの措置が検討されてきた。インド-アセアンFTAにより関税がゼロであるため、輸入が増加し、教育への投資を支える一方で、低品質品の流入が国内製紙業界の技術革新と供給能力向上の妨げとなっている。
*ナインドラゴンの増産計画が中国印刷用紙市場に与える影響
ナインドラゴン(Nine Dragons Paper)は、中国最大の紙パルプメーカーであり、湖北省の荊州工場と広西チワン族自治区の北海工場において大規模な増産計画を進めている。
荊州工場では、2022年に段原紙120万トンが稼働、2023年には機械パルプ60万トン、今年の3月には非塗工上質紙60万トン(35万トンと25万トンの2機)が生産を開始した。さらに、ここで6月末に、Andritz製の木材パルプ新ラインが稼働し、非塗工上質紙等の原料供給を強化する態勢を整えた。年産65万トンの能力を持つこのパルプ新ラインは、LBKP/NBKPの併抄が可能である。また、本年度はこのほかに、機械パルプ70万トンとコートアイボリー120万トンの新マシン稼働が予定されている。
一方、北海工場では、2022年第4四半期に段原紙80万トン、非塗工上質紙55万トン、機械パルプ20万トンの稼働を手始め、2024年1月には非塗工上質紙55万トン、さらに今年中には(本来の計画では第2四半期中)非塗工上質紙70万トンの新マシンが稼働する予定である。
両工場での新マシンの稼働により、今年は合計130万トンの非塗工上質紙が市場に供給される見込みで、既に供給過剰の状態にある市場に更に大量の供給増となり、供給過剰が悪化し、市況の回復の遅れが懸念される。
*北米段ボール市場の需要減少と生産調整の動向
北米の段ボール市場は、関税問題や景気の低迷により、需要と供給のバランスが大きく変化している。米国市場の第1四半期の段ボール実出荷量は前年同期比で2.1%減少し、2016年以来の最低レベルとなった。これは、関税問題や経済の不透明感が影響している。2023年の在庫調整期間を経て、2024年には一部回復が見られたが、実需を伴った需要には至っていない。
さらに、米国段原紙メーカーの輸出は本年第1四半期には前年比7.7%減少し、特に関税問題の応酬により、クラフトライナーの輸出はその後も大幅に減少している。1-5月累計のメキシコ向けは3.9%、中国向けは57.7%の減少となり、中国への輸出は関税問題の影響で一時商談がストップし、船積も見送られる状況となった。
このような状況に対応するため、段原紙メーカーは生産停止を進めており、2025年3月以降、IP/Red River, Campti工場、Greif、Smurfit Westrock/Forney工場、Georgia Pacific(GP)/Ceder Springs工場、Cascade/Niagara Falls工場が生産停止を発表、さらに直近ではCascadesがSpring Falls工場の中芯生産マシンを9月3日までに永続的生産停止とすることを発表した。北米の段原紙メーカー生産停止は、9月までに約240万トンに上る。
一方で、ND Paperは2024年4月以降に生産を停止していたBiron工場の25号機の生産再開を発表し、近日中に24万トンの再生ライナー及び未晒クラフト紙の生産が再開される見通しである。
このように、北米の段ボール市場は関税問題や経済の低迷により需要が減少し、輸出も低調な状況が続いている。今後も関税問題や経済状況、需給動向の変化には注視が必要である。
北米市況(7月度)
[新聞用紙]
北米市場の新聞用紙需要は、年初は好調だったが、輸入関税の影響で減少に転じた。1-5月の需要は前年同期比▲10.3%で、2025年度は▲13%の減少が予想される。輸出も1-4月累計で▲15%減少し、特に中国、欧州への輸出が大きく落ち込んでいる。5月の稼働率は95%へ上昇したが、中質紙への生産シフトが進んでいる。今後の市場動向によっては、代替需要の獲得や大規模な生産調整が必要となる。価格は6月も横ばいで推移している。
[印刷用紙]
米国市場における1-5月の印刷用紙の需要は前年同期比で▲2.3%の減少。構造的に雑誌や広告の需要減少が続き、景気の低迷を背景に企業の定期発刊物、請求書、各種書簡等の消費が減少している。第1四半期は輸入関税問題への懸念で、輸入品を中心に在庫の積み増しが需要を支えたが、第2四半期に入るとその影響は急速に後退。さらに、郵便料金の値上げが、今後の紙需要に悪影響を与えると予想される。
上質紙は、第1四半期に輸入関税問題の影響で輸入品中心に在庫確保が進み、累計需要は前年同期比▲1.7%の減少、輸入は+31.4%増加となり需要を支えた。しかし4月以降市場は様子見に入り、輸入は減少した。IP/Georgetown工場の生産停止(▲30万㌧)に続き、Pixelle Specialty Solution/Chillicothe工場が8月10日に生産停止となり、供給は一層タイトになることが予想される。本年後半には約40ドル値上げとなる可能性がある。
コート紙は、第1四半期に在庫積み増しがあったが、第2四半期に入ると、関税交渉の行方への懸念から、市場の動きは硬直した。景気の減速や郵便料金値上げの影響で、第2~3四半期の需要は5~8%程度押し下げられると予想される。供給面では、需要が低調であるにもかかわらず、生産削減等により北米メーカーの供給状況はタイトである。価格については、輸入塗工紙の主要メーカーが、今後の交渉次第で、輸入関税上乗せ分を価格転嫁するかどうかが注目される。
[段原紙]
米国市場の第1四半期の段ボール出荷実数は、前年比▲2.1%の大幅減少となった。第1四半期の米国段原紙メーカーの生産量は、前年比+0.4%となったが、輸出は段原紙全体でこの間同▲7.7%の減少となり、輸出は4月以降も減少が続いている。特にKLBの輸出は大幅な減少となった(1-5月累計で同▲11.8%)。北米市場の段原紙の価格は横ばいで推移しているが、低調な需要での推移のなか、原紙メーカーが値下げ要望に応じるケースも見受けられる。関税関連で市場は依然として不透明で、段原紙の需給は過多の状態である。今年3月以降9月までに、段原紙約240万㌧の生産削減が実施される。
欧州市況(7月度)
[新聞用紙]
6月の新聞用紙市場では、2Q契約分の価格が維持されている。需要は低位安定だが、中質系印刷用紙からの代替需要で比較的堅調である。平均稼働率は85-90%で推移しているが、コスト高の中で価格転嫁は厳しい状況。アジア向け輸出が低調な北米メーカーが、欧州市場で存在感を増しており、3Q交渉で価格下落の懸念がある。
[上質紙]
コピー用紙の需要が春以降低調、6月にはドイツ・フランスで€20-30の値下がりが見られた。南欧でも同様に値下がりが続いている。アジア品の流入が続き、値下げ基調が加速している。オフセット用もイタリアで€20下落、ドイツ・フランスで平判は€20程度下落。供給過多が続いており、市況の安定には生産能力削減が必要である。
[コート紙]
中国のパルプ価格下落が欧州にも波及し、6月にコート紙価格の下落が顕著になった。ドイツでは€20下落、フランス・スペインでは€10-20下落、イタリアでは最大€40の下落となった。夏場の非需要期には、価格対応も受注増に繋がらないため、供給サイドは価格変動を避けたいというのが本音である。市場は暫く硬直した動きを予想している。
[段原紙]
テストライナーがドイツ・フランスなどで前月から€40程度の値上げとなり、UK・スペインも横ばいで安定しているが、イタリアでは逆に最大€40の下落が見られる。これは新たに稼働したMondi/Duino工場の影響とみられる。クラフトライナーも一部で値上げが見られるものの、南欧市場では北米品の価格が据え置かれており、今後の段原紙の市況動向への影響が懸念される。
中国・香港・東南アジア市況(7月度)
[上質紙]
中国市場では、春先の出版用途需要が終わり、全体的に低調な荷動きが続いている。紙商は過剰在庫に苦しみ、安値での在庫投げ売りが見られる。パルプ価格の下落により先安感が広がり、需要回復の兆しはない。
香港市場でも、春の需要期が終わり、荷動きが鈍化している。中国メーカーの生産増強により供給余力が拡大している。パルプ価格の下落から、中国メーカーは7月生産より再度値下げを行っており、市況は軟化傾向が続くと予想される。
[コート紙]
中国市場では、印刷業者が必要な分だけを手当てする当用買い姿勢を続けており、紙商の在庫は概ね高止まり状態にある。パルプ価格の下落で市場価格は下落基調にある。メーカーは値上げ意向があるが、実需が伴なっておらず、価格は一段安となっている。
香港市場では、需要の低迷とパルプ価格の下落により市況は軟調である。中国メーカーが7月生産から再値下げを行い、価格低落がこの先も続く見込みである。米国向け出版物の再輸出品は関税政策の影響で取引が保留され、需要に影響を与えている。
[板紙]
中国市場の段原紙は、季節的な非需要期とEC商戦が低調であった影響で、内需が冷え込んでいる。市況の回復は暫く見込まれない。
香港市場では、アイボリーは中国メーカーの供給過剰で、市場価格の下落が続いている。白板紙は旧正月明け以降価格が下落しており、原料古紙の値上がりで一時的に価格上昇したものの、需要低迷により再び値下げに転じている。
[東南アジア市場]
東南アジア市場の紙板紙市場は、学校休業期間と長期休暇の影響で企業活動の停滞により、需要が減少している。印刷会社は機械設備を手放し、アウトソーシングや取次業務に焦点を当てる動きが増加している。米国との関税問題が紙需要に不確実性を与え、市況は価格の下落を伴う状況が続いている。市場価格は前月水準から更に軟化し、供給過多と在庫過剰により苦しい状況が続いている。
【統計】5月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2025年5月の紙・板紙合計輸出は14万604トン(前年比12.6%減)、輸入は7万3,032トン(同0.8%増)となった。国内需要は153万9,478トン(同2.8%減)となった。
内需no
内需、輸出減、輸入増の傾向が続いた。

【統計】5月 米国輸入状況
米国の2025年5月の紙・板紙の輸入は合計58万5,063トン(前年比4.7%減)、金額は6憶4,029万5千ドル(同5.3%減)となった。そのうち印刷用紙合計は24万7,839トン(同5.0%減)、金額は2億6,867万4千ドル(同8.5%減)と減少に転じた。
同1-5月累計は紙・板紙合計で310万8,925トン(同6.3%増)、34億3,831万9千ドル(同7.0%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。
【資料】米国関税動向
米国トランプ大統領が公表した主要国に対する相殺関税は以下のとおり。(2025年7月22日現在)
Japan 15%, Philippines 19%, Indonesia 19%, Vietnam 20%, United Kingdom 10%, European Union 30%, Mexico 30%, Canada 36%, Brazil 50%
(参考)以下の国の2024年米国紙・板紙合計輸入額
Japan 4,362万2千ドル(関税額推計654万3千ドル)
Indonesia 2億4,834万1千ドル(同4,718万4千ドル)
Vietnam 3,676.0万ドル(同735万2千ドル)