紙類紙類海外動向レポート
2025年第8号 2025年11月

Contents
海外動向トピックス
北米市況(10月度)
欧州市況(10月度)
中国・香港・東南アジア市況(10月度)
【統計】8月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
アジア紙パルプ会議

海外情報トピックス

※Stora Enso/Oulu工場6号機(フィンランド) 箱用板紙への転抄マシン ユーザーへの供給を開始

Stora EnsoのフィンランドOulu工場6号機は、2020年以降停止していたが、コート紙の生産から消費者用包材白板紙(FBB、CUKなど)への生産転換を進め、2023年3月に稼働を開始した。持続可能な紙製包材の需要が高まり、プラスチック包材の代替として白板紙の生産が進められた。当初は永続的な生産停止が予定されていたが、冷食やファストフード、飲料向け包材の生産へと方針を転換し、2027年までにフル生産を目指す。Stora Ensoの増産は成長戦略による方向転換であるが、欧州市場では既に供給過多の懸念がある。Metsa BoardはフィンランドのTaco工場でFBB生産を停止し、市場ごとに方針が異なる。米国の追加関税によりアジアからの安価な製品が欧州市場に流入しており、市況は軟化している。Stora Ensoも当初米国市場をターゲットとしていたが、現在は欧州市場を主戦場としている。


※中国上海先物市場/非塗工上質紙の先物契約取引を開始

上海証券監督管理委員会は、国内外で生産された非塗工上質紙の先物契約取引を承認し、上海先物取引所は9月10日から取引を開始した。契約仕様は、米坪65/70/75/80gsm、白色度80-85%、1ロット当たり40トン、取引通貨は人民元。値幅制限は前日価格基準で上下4%以内。取引可能な企業は、年間20万トン以上の生産能力と一年以上の安定生産、さらに中国の「十環認証」(公式の環境ラベル認証)を取得したグリーン企業であることが条件。現時点で承認されたメーカーは、岳陽紙業、山東銀河瑞雪、山東太陽、山東華泰、Asia Symbol(Shandong)、Asia Symbol(Guangdong)、山東博匯、ナインドラゴン(北海)、聯盛、僕陽龍峰などである。


山東晨鳴紙業グループ 寿光工場でほぼすべての紙パルプ生産を再開

山東晨鳴紙業は、長引く市況の低迷と過剰生産による財政悪化から、昨年11月にその多くの生産停止を余儀なくされていたが、9月には基幹工場である山東省寿光工場での生産をほぼ全面的に再開した。具体的には、上質紙(101万㌧)や上質コート紙(80万㌧)、ティッシュ紙(計12万㌧)、パルプ(100万㌧)の生産が再開されている。昨年11月には、国内5ヶ所の工場のうち4工場合計700万トン相当の製品の生産が停止したが、今年初頭に一部再開され、3月(寿光工場 上質38万㌧、南昌工場上質17万㌧、機械パルプ17万㌧)と7月(吉林工場、寿光工場のパルプ)でさらに再稼働が進んだ。しかし、吉林工場や広東省湛江工場での生産再開の予定は未発表。コートアイボリーについては供給過多と市場価格の低迷が続き、再稼働の見通しは立っていない。


※インド/紙コンバーターが改正GSTによる税率の是正を要求

インドの紙板紙コンバーター同業界は、改正GST(物品・サービス税)により決定された原紙及び加工製品における13%の税率差につき、インド政府当局へ是正を緊急に求めた。この改正は、本年9月3日に発表され9月22日に施行されたが、原材料に対する税率が最終製品よりも高くなる「逆転構造」となっており、混乱が生じている。具体的には、段ボールの税率が12%から5%に引き下げられた一方で、クラフト紙・段原紙の税率は12%から18%に引き上げられた。これにより産業界は資金調達の困難に直面し、業界団体のみならず地域の小規模な業界関係団体も、首相府や財務省に介入を求める書簡を提出した。特にノート・帳簿などの製造企業では、これらの製品はGSTが0%であるが、原材料である非塗工印刷用紙は18%の税率が適用される。このため、コンバーターは原材料に対する仕入れ税額控除を請求できず、また還付には複雑な手続きを経る必要があるが、それには2~3か月の期間を要すると指摘されている。更に輸入業者が異なるHSコードを使用することにより、国内メーカーを不当な輸入競争に晒しており、ASEAN協定によりアジアから輸入されるノートなどは0%のGSTで販売可能となっているが、これに対抗すべき価格の引き下げは非常に厳しくなっているのが現状である。

北米市況(10月度)

[新聞用紙]
需要は1-8月で前年比▲15.2%減、生産、出荷も同程度の減少となった。更なる需要減少の予想に加え、昨年来輸出も減少しており、少なくとも約50万㌧程度の生産削減は必要と見込まれる。White Birch/Krugeは操短を延長、Domtar/Grenada工場は無期限の生産停止ととなった。これを受けDomtar/White Birchは、$50の値上げを発表、他メーカーも海外市場を含めて価格修正を検討している。

[上質紙]
2Qの上質紙市場は、関税交渉の影響で鈍化し、膠着状態となったが、8月以降の関税発動を懸念した輸入の前倒しが再び進み、需要は安定が保たれたかたちとなった。供給面では、IPやPixelleの工場停止で供給が引き締まり、値上げの動きが出始めた。8月以降、ブラジル等主要輸入国への高関税により、北米メーカー品へシフトも予想されるが、現状は輸入品の十分な在庫があり、当面追加購入の必要は必要がない。生産削減で供給環境は引き締まっており、在庫の適正化が果たされたのち、来年初以降、市況は堅調に推移すると予想される。

[コート紙]
上質コート紙の1-8月累計需要は132万㌧(同▲6.9%)。景気の低迷で、特に企業向けの需要は低調である。8月以降、相互関税の発動で市場の不透明さが予想され、2Qも輸入は減少が続いた。郵便料金の値上げにより、今後の需要への影響が懸念されるが、秋需への期待、在庫補充の時期なども重なり、今後荷動きは若干回復を見込む。欧州・韓国等主要メーカーは、関税分の一部を価格へ転嫁、北米メーカーも追随した。末端ユーザーまで価格浸透には時間を要す可能性もある。実需は改善されておらず、輸入関税が主要因の価格修正となっている。

[中質紙]
2Q以降在庫調整に入り、1-6月累月の需要は前年比▲2.6%減。今後欧州から輸入の減少も予想されるが、カナダからの供給は余力もあり、安定している。新聞用紙の生産削減と値上げにより、中質紙への需要シフトもある。稼働率は72%と依然として低調で、価格の維持には、更なる生産削減が必要である。

[段原紙]
輸入関税問題の影響によるインフレ懸念から、上半期の段ボールの出荷は、同▲2.3%と減少した。さらにKLBの輸出は、1-7月累計で同▲11.1%減少しており、米国段原紙の需給バランスの重荷となっている。本年2月以降、主要各社が相次いで生産停止を行ない、全生産能力の8.5%相当(約340万㌧)が削減されるため、今後生産稼働率は、90%台後半へと改善が期待される。生産削減により供給が引き締まり、今後の市場価格も、需要次第で値上げが期待できる。

欧州市況(10月度)

[新聞用紙]
四半期・半年契約が多く、9月の価格は横ばい。需要は低迷し、紙の消費量も減少している。カナダ品の低価格も、一部欧州メーカーが価格対応を行っており、カナダ品の優位性は薄れている。

[中質印刷用紙]
中長期契約が多く、SC紙の価格は横ばい。需要も低調で、UPM/Ettringen(独)の工場の閉鎖は労組との協議が継続中。中質コート紙も、価格は前月から横ばいで、一部ではスポット取引も見られる。フィンランドでは、Metsa Board/UPMなど生産能力の削減が発表されているが、供給過多の解消には未だ不足している。

[非塗工上質紙]
9月の上質紙の価格は安定しているが、印刷用で上限が€20ほど下落。9月の需要は脆弱で、回復は遅れている。価格上昇と利益率改善には、生産能力の更なる削減が必須。

[塗工紙]
7~8月にも価格は大幅に下落、9月は上質コート紙が横ばい。需要は依然低調で、生産能力が需要を常に上回り、価格の下方圧力がかかる。4Qの価格交渉に、メーカーから値上げの動きは見られない。

[段原紙]
TLBは概ね€20~35下落。英国は比較的安定だが、10月以降下落の可能性もある。10月で大手メーカー4社が最大€120の値上げを打ち出しており、KLBの動向にも影響が出ると予想される。KLBは仏・独で6月に実行された値上げ(€40-)も、9月までには€30程度下落となった。南欧市場は、北米からの安価な輸入品で、依然下方圧力が強くなっている。米国品は他の欧州市場にも価格の下落圧力を与え始めている。

中国・香港・東南アジア市況(10月度)

[印刷用紙]

9月の中国の印刷用紙市場では、供給過剰と低調な需要により、価格は下落基調を辿っている。コート紙は4.13%、上質紙は約2%、前月から価格が下落した。生産調整のため停止していたマシンが、8月半ば過ぎから再稼働したことで供給は逆に増加しており、在庫は増大しはじめた。商業印刷の不振、出版分野における入札の遅れなどが影響し、需要の下落に拍車をかけている。チェンミンは主要工場での生産再開を行ない、上質紙は各社で生産能力の増大により、供給過剰は更に悪化している。サプライヤーはシェアの維持に注力しており、市況は今後も軟化が続く見通し。パルプ価格底入れを受け、サプライヤーは値上げのタイミングを模索している。

コート紙の需要低迷は、上質紙以上に深刻で、特に米国向けの案件では、米中関税交渉の影響が長引いており、回復の見込みが立たない状況。欧州向けもEUDR規制の開始が一年延長となるとの見込みから、新たな対応が必要である。10月中下旬から、出版向けの入札が本格化するが、低価格での落札が予想されており、価格は一時的に更なる下落が見込まれる。11月以降は出版注文の納品開始、年末のわずかな需要増で、価格には小幅反発が見込まれるが、供給過剰から、値上がり幅は限定的と予想される。


[板紙]

アイボリー市況は底入れの兆しが見られる。供給過多が続く中、サプライヤーは採算性の回復を図るため値上げを実施している。白板紙も古紙価格の高騰を背景に、価格修正が進行中である。段原紙市場では、古紙価格の高騰により大手メーカーによる値上げが行われた。供給面では各工場で生産調整が続けられている一方、需要面では年末需要を期待した荷動きも見られ、8月以降は価格上昇が続いている。原料古紙には供給の回復が見込まれ、コスト圧力が軽減される見通し。今後は、年末商需を背景に11-12月は需要が堅調に推移し、段ボール価格にも段原紙の値上げが

徐々に浸透し、小幅ながら価格上昇が期待される。全体として、市場は緩やかな上昇基調での推移を予想。

【統計】8月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年8月の紙・板紙合計輸出は12万5,202トン(前年比17.5%減)、輸入は5万9,072トン(同10.0%減)となった。国内需要は139万1,617トン(前年比7.9%減)となった。
印刷用紙・板紙とも内需が前年比減。

アジア紙パルプ会議

2025年10月16日、グランドプリンス高輪において「第8回持続可能な発展のためのアジア海パルプ会議」本会議がおこなわれた。アジア各国から179名が参加した。
各国代表によるアソシエーションレポート、基調講演、カーボンニュートラル、サステナビリティのセッションがおこなわれた。
次回は2027年に中国で開催される予定。

紙類紙類海外動向レポート
2025年第7号 2025年10月

Contents
海外動向トピックス
北米市況(9月度)                                欧州市況(9月度)
中国・香港・東南アジア市況(9月度)
【統計】7月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】7月 米国輸入状況
【貿易制度】米国 ファーストセール                                         


海外情報トピックス

*中国産輸入化粧板原紙に対し、各国がダンピングの疑いで実態調査を実施

中国製の化粧板原紙に対し、各国でアンチダンピング税が導入され、加えてブラジルでも実態調査が開始された。
ブラジル政府は、中国からの輸入化粧板原紙に対し、アンチダンピング導入の是非を判断すべく実態調査を開始した。HSコード4805.91.00に該当する非塗工、印刷・含侵加工を施していない原紙で、幅125㎝以上、米坪50-150gsmのものを調査対象とした。輸入対象期間は2023年7月~2024年6月、市場被害の期間は2019年7月~2024年6月。2020年のブラジルの同製品の輸入は2.6万トン、そのうち38.8%にあたる9,900トンが中国産である。2021年以降、中国産の輸入は増加が続き、2024年輸入総量2.4万トンのうち68%が中国産。
他の市場でも、インドは、2021年12月に既にアンチダンピング税を導入しており、2025年3月に一部のメーカーに対し、課税率の見直しを行ったうえで、2026年末まで継続適用中である。また、欧州委員会(EC)は、2024年6月以降、中国品に対する実態調査を開始し、2025年2月に31%~34.9%のアンチダンピング税を導入することを決定した。

*UPM、Sappi Europeが雑誌用印刷用紙(中質軽量コート)の生産能力を削減
欧州市場における雑誌印刷用紙の需要低迷とデジタル化の進展により、特に雑誌の需要は減少が続いており、欧州市場における今年第2四半期の雑誌用紙の需要は、前年同期比▲11%減少となった。この状況を受け、UPM、Sappi Europeの欧州印刷用紙大手メーカー2社は、主力である中質コート紙の工場における生産削減を発表した。
UPMはフィンランド南東部のKaukas工場における中質軽量コート紙の生産を、本年末までに永続的に停止する。これにより年産30万㌧が減少となる。UPMのフィンランドにおける中質軽量コート紙はRauma工場(67万㌧)に集約され、Caledonian Paper(英国)、Augsburg工場(ドイツ)と合わせ、合計140万㌧の生産能力は、依然として世界最大の生産規模を保つ。UPMは他の地域での生産を続けつつ、中質軽量コート紙の生産を集約し、生産の効率化を図る
一方、Sappi Europeは、同様に雑誌用紙の需要減に対応し、フィンランドKirkniemi工場での中質コート紙の生産を減らし、非塗工の書籍用紙の生産に転換させる計画を進める。この動きは、世界最大級である中質軽量コート紙の生産拠点であるKirkniemi工場(中質コート紙75万㌧、内今回の生産減はおよそ17万㌧)の能力を活用しつつ、雑誌を中心とした印刷用紙から他の分野への転換を図るSappiの戦略に基づいたもの。Sappi Europeは、印刷用紙からの撤退を徐々に進め、機能紙や軟包材、粘着ラベルへの投資を拡大していく戦略を実行中である。

*中国大手板紙メーカー 生産調整を実施
中国最大の板紙メーカーが、過度な競争を是正し、健全な発展を促す国家キャンペーンを背景に、それぞれ東莞工場で生産調整を実施する。ナインドラゴンは広東省東莞工場の2機の塗工白板紙マシンを8~10月の間にそれぞれ2週間程度生産停止、合計4.2万トンの生産削減を計画する。これはエネルギーコストの低減と生産効率の向上を図るための機械改造を含んでいる。理文造紙も同様に、東莞本梅工場の17号機を9月1日から10日まで休止し、白板紙合計1.8万トン相当を減産する見込みである。これらの調整は、政府の方針に応じた各企業の健全な成長と透明性の向上を目的としている。
また、山鷹紙業国際は9月後半~10月初にかけて、安徽省・浙江省・湖北省・吉林省の主要工場においてメンテナンス休止を実施、再生段原紙合計10.2万㌧分を減産する。中国の段原紙市場は、本年初から一貫して市況の低迷で市場価格も下落が続いていたが、今夏の悪天候で異常な洪水が発生し、古紙の回収不能と流通に支障が発生したことにより古紙価格が急騰した。8月はその影響から、段原紙の価格もおよそ200元/㌧前後反騰している。9月以降も段原紙各社は、更なる価格の修正をユーザー側に迫っており、山鷹紙業の生産調整は、その状況を受けてのものとなる。

*山東晨鳴紙業グループ休止中の生産工場のうち2工場でパルプ生産を再開

山東晨鳴紙業グループは、昨年11月以降停止していた4工場のうち、山東省寿光工場と吉林省吉林工場でパルプ生産設備の運転を再開予定である。これは、複数の銀行によるシンジケートローン23.1億元が組成されたことによるもの。昨年9月末、負債の未払いにより資金繰りが悪化し、5工場のうち4工場で生産(約700万㌧相当)が停止されていた。今回、比較的採算の良いパルプの生産を優先するが、依然として紙市況が低迷する中、パルプ市況の悪化にも繋がるとの懸念もある。

*フィリピン政府 輸入中芯に200日間のセーフガード実施を決定
フィリピン通商産業省のフィリピン関税委員会は、海外からの中芯輸入に対するセーフガードの導入を決定する。暫定的なセーフガードは、8月1日から200日間実施され、トン当たり3,438フィリピンペソ(約60ドル)の関税が課される。調査はフィリピン製紙連合会(PULPAPEL)の申立てに基づいて行われたもので、HSコード4805.19.10、4805.19.90、4805.12.00が対象である。2019年から2024年のデータに基づき、2024年の中芯輸入量は12.8万トンであり、2019年の7.5万トンから71%増加している。主要輸入国は日本、インドネシア、オーストラリア、ベトナムであり、2024年の輸入の54.5%は日本からである。
一方、フィリピンでは輸入テストライナーへのセーフガード導入の検討も続いており、調査が進行中である。輸入テストライナーへのセーフガードは2010年に導入され、2013年と2016年に延長され、2020年6月には適用解除となっている。国内の製紙需要は増加しているが、輸入品の流入も再拡大しており、国内メーカーの平均生産稼働率は70%前後にとどまっている。国内市場で
は生産過多が加速している。

北米市況(9月度)

[新聞用紙]
需要減と稼働率の低下で8月は▲$25下落となった。2025年の需要は前年比▲14%減の86万㌧程度となる見込み。生産量の半分以上を占める輸出も、昨年後半以降は減少が続き、今後生産削減は不可避。White Birch/F.F.Soucy工場が操業停止期間を延長、Kruger/Corner Brook工場も森林火災のリスクあり一時停止中。Domtar/Grenada工場(23.5万㌧)は9月に無期限生産停止とした。

[上質紙]
輸入関税問題の影響から市場には不透明感が依然として強い。1Qは在庫確保のため輸入品中心に積み増しが行われたが、追加関税交渉の見極めから、4-5月は状況様子見となった。8月からの関税導入を前に、6-7月には再び、輸入で前倒しの動きが見られた。輸入は1-7月累計で前年比+50%増。国内需要(見かけの消費)は横ばいで、北米メーカーの出荷は同▲7%と低調。IP/Georgetown工場(昨年末、30万㌧)、Pixelle/Chillicothe工場(9月、40万㌧)、に加えIP/Riverdale工場(Selma)が来年3Qを目途に段原紙への転抄のため生産減となる。供給に引き締まりが見え、年後半には、稼働率の上昇と値上げを目指す動きが期待される。

[コート紙]
関税問題への対応で、輸入紙で在庫積み増しの荷動きが活発化した。しかし2Qは、在庫を保ちつつも、一転して市場は様子見となった。国内の需要(見かけの消費)と国内メーカーの出荷はともに減少傾向が続く。今後は、郵便料金の値上げ(7月~)が需要に与える影響が懸念されるが、積み増していた在庫の消化も進み、再び在庫補充の需要も期待される。8月からの追加関税の本格稼働を受け、欧州・韓国のメーカーからは、一部価格への転嫁の動きが出始めた。国内メーカーからも追随の姿勢が見られ、ほぼ価格修正の動きは出揃ってきた。

[中質紙]
1Qは供給の中心となるカナダ品で在庫積み増しが進んだが、2Qは過剰在庫の調整となり荷動きは低迷した。北米メーカーの稼働率は70%前半で依然として低調。欧州からの輸入が関税率の上昇で減少が懸念され、また非塗工上質紙が値上げとなれば、中質紙への代替需要も期待されるが、供給力に全く不安がなく、値上げの動きには繋がってこないと予想される。

[段原紙]
上半期の米国市場の段ボール出荷は、需要の低迷に加え、関税問題によるインフレ懸念、市場の不確実性で消費が停滞、前年比▲2.3%と低調となった。北米からの輸出も減少hしており、2-9月の間に複数のメーカーが、段原紙の生産停止を実行した(合計約380万㌧)。生産稼働率の上昇に繋がり、価格の上昇に期待がかかる。

欧州市況(9月度)

[新聞用紙]
8月の欧州市場の新聞用紙価格は横ばい。市況は供給過多と生産コスト増、カナダ品との競合で軟調である。

[印刷用紙/中質系印刷用紙]
8月のSC紙の市場価格は概ね前月から持ち越し。需要は低調である。非塗工紙のUPM/Ettringen工場(ドイツ)の停機につき、従業員側と条件交渉中。中質コート紙の需要は低調で、UPM/Kaukasu工場(フィンランド)の年内生産停止を発表した。Sappi/Kirkniemi工場2号機の生産停止とともに、供給の引き締めに期待。

[非塗工上質紙]
8月度の価格は、ドイツのコピー用紙が€20-30下落以外は、ほぼ前月横ばいで推移。夏の非需要期で需要は閑散としている。価格対応が必ずしも受注に繋がらないため、サプライヤー側は積極的な交渉には応じていない。APPが夏季休暇明けの学校関連需要、秋需を見越し5%の価格引き上げを発表。

[コート紙]
夏場の需要が低調で、需給も供給過多が更に加速、市場価格には強い下方圧力が働いている。ドイツ・フランスで、7-8月で在庫用(平判)価格が累計▲30ユーロ程度下落。一部の市場では、8月後半頃より更に▲30ユーロ下落となった。今後生産能力の更なる削減は避けられないという見方が専らである。

[段原紙]
TLBはほぼ全域で価格が下落。夏の非需要期、輸出の減少、原料古紙(OCC)の価格下落により、主要市場で概ね▲€20以上の下落となった。南欧はこれまで比較的堅調だったが、他地区のメーカーからの安値攻勢で、結局同様に▲€20下落した。KLBも同様に全域で価格が下落。イタリアでは、Mondi/Duino工場の新規マシン稼働、北米品の供給で▲€20以上の値下げとなった。

中国・香港・東南アジア市況(9月度)

[印刷用紙]
洋紙市場の価格は季節的な需要減少で更に下落。8月度価格は157g両面コート紙で前月比▲3.27%、70g高白上質紙で同▲2.52%となった。製紙メーカーの値下げ、在庫消化の圧力で値下がりは更に加速している。パルプ価格が底値と見た輸入パルプサプライヤーは、秋需も見越して、7-8月で段階的に値上げを打ち出したが、紙需要は依然として低調なため、値上げの実現はある程度限定的とみられる。

今後の見通しは、9月は供給過多と需要低迷の状況は変わらず、市況は依然低調な動きを予想。10-11月は出版入札、年末商戦の開始で、一時的な価格の反発も期待されるが、供給にはいまだに過多であり、実現される場合も値上げ幅は限定的なものとなろう。

[板紙]
中芯およびライナーの価格は、8月から上昇に転じている。上級グレード中芯120gの価格は、前月比+4.7%、白板紙(裏ネズ)の価格は同+1.01%となった。悪天候、洪水による原料古紙の発生、回収不足による価格の上昇、秋需に備えた段ボールメーカーの在庫補充で、大手紙メーカー中心に値上げが進められた。さらに、8月後半以降は、ナインドラゴンや理文などの広東省の工場中心に、白板紙の生産調整が行われている。

今後9月上旬にかけて価格の上昇は続くと予想されるが、中旬以降にはメーカーの生産調整が終了するため、再び価格の反落が懸念される。11月からは年末商戦による需要の回復が期待されるが、米国の輸入関税による荷動きへの影響、原料コストは、段原紙他板紙の市況変動要因ともなり注視が必要である。

【統計】7月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年7月の紙・板紙合計輸出は13万5,901トン(前年比11.0%減)、輸入は7万4,547トン(同4.5%増)となった。国内需要は160万1,212トン(前年比5.8%減)となった。
段ボール原紙、紙器用板紙の内需金額のみ前年比増加。

【統計】7 米国輸入状況

米国の2025年7月の紙・板紙の輸入は合計55万3,460トン(前年比13.5%減)、金額は5憶9,577万2千ドル(同15.2%減)となった。そのうち印刷用紙合計は23万3,500トン(同8.2%減)、金額は2億5,433万5千ドル(同11.7%減)と減少が続いた。
同1-7月累計は紙・板紙合計で425万4,529トン(同1.7%増)、46億7,145万4千ドル(同1.5%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

米国 ファーストセール

輸入者が商品を輸入する際に課税価格を低減するために活用される方法。
輸入者が商品を購入する際の最初の売買契約(ファーストセール)に基づく価格を課税価格として申告することが認められている。これにより課税価格を削減できる可能性がある。なお、適用には架空取引ではない証明などの条件がある。

紙類紙類海外動向レポート
2025年第6号 2025年9月


Contents
海外動向トピックス
北米市況(8月度)                                欧州市況(8月度)
中国・香港・東南アジア市況(8月度)
【統計】5月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】5月 米国輸入状況
【資料】フィリピン中芯原紙輸入統計                                         【資料】第9回アフリカ開発会議(TICAD9)


海外情報トピックス

*インドネシアAPP傘下工場でライナー新マシンテスト生産
インドネシアの大手製紙メーカーAPPは、西ジャワ州のIKPPカラワン工場において、ライナーボード新マシンのテスト生産を開始した。マシン幅8.46m、速度1,450m/分で、年間70万トンの高品質ライナーボードを生産予定。テスト生産期間は約6か月。APPのインドネシアにおける段原紙の生産能力は約200万トンで、そのうちライナーは約半分を占めている。新マシンの稼働により、ライナーの生産能力は170万トン程度に増加となる。東南アジア市場では、供給過多と中国市場の不振により市況が低迷しており、更なる市況の軟化が懸念される。

*インド政府 インドネシアからの輸入白板紙にダンピングの実態調査を開始
インド政府の商工省傘下の貿易救済総局(DGTR)は、インドネシアから輸入されるバージンパルプベースの多層抄き白板紙に対してダンピングの疑いで調査を開始した。昨年10月には、中国とチリからの同品目の輸入についても調査を行っており、今回の調査はそれに続くもの。インドネシアのAPRIL社は2024年1月にスマトラ島ケリンチ工場で新しいFBB製造マシンを稼働させ、インドへの輸出が急増している。2025年までにインドネシアはスウェーデンを抜いてインドへの輸出第2位となった。インド製紙同業会(IPMA)は、インドネシアの国内市場での販売価格がインド国内メーカーの生産コストを下回っており、輸入増加がインドの製紙業界に甚大な被害を与えていると主張している。

*中国パルプメーカーによるフラッフパルプ生産能力の拡大
米中間の関税問題の応酬の影響から、中国が主に米国より輸入するオムツ用のフラッフパルプの輸入量が直近では急減しており、中国の紙パルプメーカーにフラッフパルプ生産への転換、あるいは新たな投資を進める動きが出始めている。(注;米国政府はブラジルに対し追加関税分を含む50%の関税の発動を主張していたが、後日パルプについては40%の追加分に関しては除外されることが判明。)
中国の海貨統計(GACC=General Administration of Customs)によると、2024年度の中国が米国より輸入したフラッフパルプの総数量は104万㌧であったが、輸入関税及び報復関税の応酬が高まる直近の、今年1-4月の月間平均輸入数量が8万㌧であったのに対し、5月度は5.8万㌧、6月度は3.2万㌧と急減している。今後の供給への不安が、中国メーカーのフラッフパルプ国内生産への投資意欲を促しており、最近では次のような計画が明らかになっている。
1)山東銀河瑞雪紙業: 既存の非木材パルプラインを廃棄、新たに30万トンの木材パルプ生産設備を設置する計画。そのうち15万トンがフラッフパルプの予定。
2)岳陽紙業: グループ企業の湖南駿泰紙業を通じ、40万トンのNBKPラインのうち約5万トンをフラッフパルプに転換予定。
3)保定瑞豊紙業: 既存18万トンの機械パルプ設備を改修、約5万トンのフラッフパルプを生産予定。
4)四川環龍集団: 25万トンの竹パルプの生産ラインを新設、そのうち20万トン程度はフラッフパルプ生産予定。
5)山東華泰紙業: 今年4月に稼働した70万トンのLBKPラインの一部をフラッフパルプの生産に充てる。

これらにより、輸入依存を軽くし、国内でのフラッフパルプを生産により供給の安定化を図る意図がある。

*米国政府当局 ブラジルSuzano社の輸入コピー用紙に対するアンチダンピング税率見直しに仮裁定
米国商務省(DOC)は2025年7月10日に、ブラジルのSuzano社から輸入されるコピー用紙がダンピング販売されているとして、アンチダンピングの仮裁定を下した。この調査は、2023年3月から2024年2月末までの輸入実績を対象に、Suzanoのコピー用紙が市場の平均価格より14.42%低い価格で輸入されていると結論づけた。最終裁定は120日以内に下される予定。米国最大のコピー用紙メーカーDomtarの申立てを受けて行われたもの。Suzanoに2016年以来、22.16%のダンピング課税が適用されていたが、最近の状況に基づき見直しが求められた。2025年1月から6月までの米国市場の平均価格は$1,625/トンに対し、ブラジルからの輸入品の平均価格は$931/トン、その差は47%に拡大している。両国間の輸入関税の応酬に基づき、Suzanoには関税率50%に加え14%が上乗せされ、合計64%が課されることが結論付けられた。

北米市況(8月度)

[新聞用紙]
1Qの需要は好調だったが、2Qでは輸入関税交渉や在庫調整の影響で減速した。6月の需要は前年比で特に大幅に減少している。2025年度も前年比▲14%程度の減少が予測される。輸出は全需要の半分以上を占めるが、1-6月の輸出量もアジア、欧州、南米各主要市場向けが減少した。カナダのメーカーはインド、欧州で安値オファーを展開している。国内外の需要減少により、北米メーカーの生産稼働率も前年同月を下回った。一部メーカーはコスト高に直面し、価格修正を検討している。

[上質紙]
北米市場の上質紙需要は、1Qは輸入関税問題で輸入品中心に在庫が増加したが、2Qには関税交渉で市場が硬直し、荷動きは鈍化した。6月には需要が一時的に回復したが、7月以降は再び鈍化している。関税導入への備えから輸入品シェアがアップする一方、需要は低調で、北米域内メーカーの出荷は減少している。
IP/Georgetown工場の生産停止は供給を引き締めたが、需要減と輸入増の陰でその効果は薄れた。今後、Pixelleの生産停止、関税率の上昇による輸入の落ち着きなどで、北米メーカーの生産稼働率は更に上昇すると予想される。
米国市場の上質紙価格は年初に値上げされ5月から7月は変動がなく、年度後半から再値上げが予想される。

[コート紙]
1Qに輸入紙の在庫が増加したが、2Qになると関税交渉の延長により市場が硬直化し、2Qの輸入は前年比で▲13-14%減となった。6月の需要と輸入も低調。1-6月の累計では、コート紙全体で、需要と輸入が前年より減少したが、輸入の割合は依然として高い。景気低迷で広告紙の需要が減少し、北米メーカーの出荷も減少している。それでも北米メーカーの稼働率は改善しており、供給の引き締めが理由である。今後も夏の非需要期と郵便料金値上げで、需要の回復は難しい。在庫が積み増されており、市況は軟調な推移が予想される。
北米市場の価格は横ばいだが、欧州品の輸入関税15%が確定し、Sappi/UPMが価格転嫁を発表した。韓国メーカーの動向が注目される。

[段原紙]
2023年上半期、米国市場での段ボール出荷量は前年比▲2.3%の減少となり、減少率が加速している。特に6月は、季節的需要の発生遅れ、今後へのインフレ圧力で、消費者・企業ともに物品購入を控え、前年比▲4.6%と低調。段原紙メーカーの生産量も前年比▲3.0%減で、海外市場も低調で、段原紙輸出も大幅に減少している。今年後半も相互関税の影響でインフレ圧力が懸念され、段ボール消費は低調に推移の見込み。需給対策は急務で、今年3月以降複数の工場で、約240万トンの段原紙生産が停止されている。

欧州市況(8月度)

[新聞用紙]
3Qの新聞用紙価格は、メーカー各社は価格下落要求に応じ、下方傾向での推移が予想される。需要は概ね想定内であるが、北米市場で苦戦するカナダのメーカーが、欧州市場で柔軟な価格対応を展開しており、概ね市況は軟調である。フランスを除く欧州市場では、€5-20の価格下落が見込まれる。英国では£15-20の下落が予想される。

[印刷用紙/中質系雑誌用紙]
SC紙の需要は低調で供給過多が続いており、市場価格は下方圧力を受けている。UPMのEttringen工場の生産停止予定があるが、これまで実行に関して具体的な発表はない。一方SappiはKirkniemi工場で非塗工中質紙の生産を開始しており、今後の市場の見通しは不透明である。

[非塗工上質紙]
上質紙の価格は6月から下落が始まり、7月ではさらに進行している。特にコピー用紙ではアジアメーカーの積極的な販売が供給過多を招き、欧州市場の広くで価格が下落している。ドイツ・フランス・英国などで特に価格の下落が顕著である。

[コート紙]
コート紙の価格下落は6月から始まり、7月に加速している。英国、ドイツ、南部欧州で価格が大幅に下落している。SappiのKirkniemi工場が非塗工中質紙への生産転換を発表したが、コート紙の供給過剰状態は依然続いており、市況の安定には生産能力の削減は必要である。

[段原紙]
テストライナーは、5月の値上げが7月には古紙価格の下落で元に戻り、4月以前の価格水準となった。注文促進のため値下げやリベートが見られるが、夏の非需要期で効果は限定的。英国とスペインは堅調、イタリアでは新マシン稼働で価格がさらに下落。クラフトライナーは比較的安定しているが、再生品ライナーの市況軟化の影響で、価格が崩れも一部で見られる。イタリアでは、ドル安で北米品が欧州の主要メーカーよりも安値で販売されている。

中国・香港・東南アジア市況(8月度)

[印刷用紙]
中国市場のコート紙は、印刷会社は必要な分のみ購入しており、依然として紙商の在庫は高止まりである。需要の低迷、パルプ価格の下落で、市場価格に改善は見られない。メーカー側は値上げを意図するものの、需要が脆弱で値上げに正当な理由は乏しく、実勢価格はさらに下落している。
香港市場も、需要の低迷により市況は軟調に推移している。中国メーカーが7月生産から値下げを行っており、夏場の非需要期を通じて価格の下落は続くと予想。米国向け出版物用は、関税政策がはっきりするまでは取引が保留され、需要の動きに影響を与えている。

中国市場の上質紙は、出版用途の需要が低調で、全体的に荷動きは鈍い。紙商は過剰な在庫を抱え、安値での在庫投げ売りが見られる。パルプ価格の下落により、先安感が広がっている。需要の回復は見られず、しばらく様子見の状況が予想される。価格戦争を食い止めるべく、中国政府は過剰生産を改める政策を打ち出し、正常な価格レベルに戻そうという雰囲気が業界にも広がっている。8月に大手製紙メーカーが値上げをアナウンスしており、今後の市場動向が注目される。
香港市場の上質紙は、6月以降も荷動きは鈍化している。パルプ価格の下落と中国メーカーの生産増強で、供給余力がますます拡大している。中国メーカーは7月生産から値下げを行っており、夏の非需要期を越えて市況が軟化することが予想される。

[板紙]
中国市場の7月の段原紙市場は、メーカーが価格復元を試みるも、低調な需要により価格はやや下落となった。大手メーカーの価格政策も様々で、中下旬には中小メーカーも値上げに追随する動きが見られた。段ボールメーカーの稼働率は50-70%で推移しており、在庫消化が遅れユーザーの購買意欲も依然として低調である。原料古紙の価格は堅調に推移しているため、コスト上昇が段原紙メーカーの利益を圧迫している。

【統計】6月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年6月の紙・板紙合計輸出は15万1,259トン(前年比11.6%減)、輸入は6万5,176トン(同6.8%増)となった。国内需要は147万6,406トン(同3.7%減)となった。
段ボール原紙、紙器用板紙は内需が増加。

【統計】6 米国輸入状況

米国の2025年6月の紙・板紙の輸入は合計59万2,144トン(前年比4.4%減)、金額は6憶3,736万2千ドル(同7.4%減)となった。そのうち印刷用紙合計は25万7,542トン(同3.8%減)、金額は2億7,598万5千ドル(同8.8%減)と減少が続いた。
同1-6月累計は紙・板紙合計で370万1,069トン(同4.4%増)、40億7,568万2千ドル(同4.5%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

【資料】フィリピン中芯原紙輸入統計

フィリピン政府は2025年8月1日、中芯原紙(HS4805.19.10,90および4805.12.00)輸入に対しトン当たり3,438フィリピンペソ(日本円約9,000円)を課す200日間のセーフガード措置を発令した。   

2024年の当該輸入は合計17万1,386トン(前年比58%増)、金額は7,896.0万ドル(同66%増)で、日本から6万9,961トン(同42%増)、2,571万6千ドル(同34%増)、中国から5万4,378トン(同13倍増)、3,226万7千ドル(同10倍増)などとなった。

【資料】第9回アフリカ開発会議(TICAD9)
2025年8月20-22日 パシフィコ横浜
フォーラム「グローバルな援助構造とアフリカにおける課題」基調講演で西尾昭彦
世界銀行 開発金融担当副総裁は、援助提供者の過密化、ドナー資金によるプロジェクトの細分化、ドナー拠出金の低いレバレッジ、そして被援助国政府の迂回についての考察を述べた。

参考文献

21st-Century Africa: Governance and Growth https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/03bdf5e3-daba-404a-a638-25c5511c2376

Africa in the New Trade Environment: Market Access in Troubled Times https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/9c85ac1f-29cd-57a6-b3c2-ec5d50136bc8

Industrialization in Sub-Saharan Africa: Seizing Opportunities in Global Value Chains https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/a7fcc389-e024-5a8a-841c-4b32ad1b4ffe

紙類海外動向レポート
2025年第5号 2025年8月


Contents
海外動向トピックス
欧州市況(7月度)
北米市況(7月度)
中国・香港・東南アジア市況(7月度)
【統計】5月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】5月 米国輸入状況
【資料】米国関税動向


海外情報トピックス

*Suzano社 K-Cとの製造販売の合弁会社を欧州に設立 ティッシュ事業を世界的に拡大

Suzanoは、世界最大のパルプメーカーとして、Kimberly-Clark (K-C)との合弁会社を設立し、ティッシュ事業のグローバル展開を加速する。合弁会社は約34億米ドルを投資し、2026年半ばまでに欧州に設立される予定であり、本社はオランダに置かれる。Suzanoが51%、K-Cが49%の株式を保有する。
Suzanoは、K-Cの生産能力を活用し、世界市場へのアクセスを強化する。特に、K-Cの14か国22の生産拠点を活用し、欧州を含む主要市場でのプレゼンスを拡大する。また、ユーカリパルプの安定供給により、生産コストを低減し、競争力を強化する。
K-Cにとっても、この合弁会社は戦略的なメリットをもたらし、米国、メキシコ、韓国、バーレーンなどの市場に集中することが可能になる。これにより、効率的な資源配分と市場戦略の最適化が期待される。
この合弁会社は、SuzanoとK-C双方にとってティッシュ事業の世界的な拡大と効率化を実現する重要なステップとなる。

*インド政府 輸入紙に対して品質管理基準を強化の方向で検討

インド政府は、輸入書籍印刷用紙に対する品質管理基準(QCO)の導入を検討している。これにより、海外サプライヤーはインドの認証要件を満たすことが求められる。すべての書籍・印刷用紙はインド企画局(BIS)の認証を取得する必要がある。主に韓国、タイ、中国、インドネシアからの低品質な輸入品が対象となり、国内市場への影響が懸念されている。過去には、安価な紙板紙の輸入が国内製紙業界に打撃を与え、セーフガードやアンチダンピングの措置が検討されてきた。インド-アセアンFTAにより関税がゼロであるため、輸入が増加し、教育への投資を支える一方で、低品質品の流入が国内製紙業界の技術革新と供給能力向上の妨げとなっている。

*ナインドラゴンの増産計画が中国印刷用紙市場に与える影響

ナインドラゴン(Nine Dragons Paper)は、中国最大の紙パルプメーカーであり、湖北省の荊州工場と広西チワン族自治区の北海工場において大規模な増産計画を進めている。
荊州工場では、2022年に段原紙120万トンが稼働、2023年には機械パルプ60万トン、今年の3月には非塗工上質紙60万トン(35万トンと25万トンの2機)が生産を開始した。さらに、ここで6月末に、Andritz製の木材パルプ新ラインが稼働し、非塗工上質紙等の原料供給を強化する態勢を整えた。年産65万トンの能力を持つこのパルプ新ラインは、LBKP/NBKPの併抄が可能である。また、本年度はこのほかに、機械パルプ70万トンとコートアイボリー120万トンの新マシン稼働が予定されている。
一方、北海工場では、2022年第4四半期に段原紙80万トン、非塗工上質紙55万トン、機械パルプ20万トンの稼働を手始め、2024年1月には非塗工上質紙55万トン、さらに今年中には(本来の計画では第2四半期中)非塗工上質紙70万トンの新マシンが稼働する予定である。
両工場での新マシンの稼働により、今年は合計130万トンの非塗工上質紙が市場に供給される見込みで、既に供給過剰の状態にある市場に更に大量の供給増となり、供給過剰が悪化し、市況の回復の遅れが懸念される。

*北米段ボール市場の需要減少と生産調整の動向

北米の段ボール市場は、関税問題や景気の低迷により、需要と供給のバランスが大きく変化している。米国市場の第1四半期の段ボール実出荷量は前年同期比で2.1%減少し、2016年以来の最低レベルとなった。これは、関税問題や経済の不透明感が影響している。2023年の在庫調整期間を経て、2024年には一部回復が見られたが、実需を伴った需要には至っていない。
さらに、米国段原紙メーカーの輸出は本年第1四半期には前年比7.7%減少し、特に関税問題の応酬により、クラフトライナーの輸出はその後も大幅に減少している。1-5月累計のメキシコ向けは3.9%、中国向けは57.7%の減少となり、中国への輸出は関税問題の影響で一時商談がストップし、船積も見送られる状況となった。
このような状況に対応するため、段原紙メーカーは生産停止を進めており、2025年3月以降、IP/Red River, Campti工場、Greif、Smurfit Westrock/Forney工場、Georgia Pacific(GP)/Ceder Springs工場、Cascade/Niagara Falls工場が生産停止を発表、さらに直近ではCascadesがSpring Falls工場の中芯生産マシンを9月3日までに永続的生産停止とすることを発表した。北米の段原紙メーカー生産停止は、9月までに約240万トンに上る。
一方で、ND Paperは2024年4月以降に生産を停止していたBiron工場の25号機の生産再開を発表し、近日中に24万トンの再生ライナー及び未晒クラフト紙の生産が再開される見通しである。
このように、北米の段ボール市場は関税問題や経済の低迷により需要が減少し、輸出も低調な状況が続いている。今後も関税問題や経済状況、需給動向の変化には注視が必要である。

北米市況(7月度)

[新聞用紙]
北米市場の新聞用紙需要は、年初は好調だったが、輸入関税の影響で減少に転じた。1-5月の需要は前年同期比▲10.3%で、2025年度は▲13%の減少が予想される。輸出も1-4月累計で▲15%減少し、特に中国、欧州への輸出が大きく落ち込んでいる。5月の稼働率は95%へ上昇したが、中質紙への生産シフトが進んでいる。今後の市場動向によっては、代替需要の獲得や大規模な生産調整が必要となる。価格は6月も横ばいで推移している。

[印刷用紙]
米国市場における1-5月の印刷用紙の需要は前年同期比で▲2.3%の減少。構造的に雑誌や広告の需要減少が続き、景気の低迷を背景に企業の定期発刊物、請求書、各種書簡等の消費が減少している。第1四半期は輸入関税問題への懸念で、輸入品を中心に在庫の積み増しが需要を支えたが、第2四半期に入るとその影響は急速に後退。さらに、郵便料金の値上げが、今後の紙需要に悪影響を与えると予想される。

上質紙は、第1四半期に輸入関税問題の影響で輸入品中心に在庫確保が進み、累計需要は前年同期比▲1.7%の減少、輸入は+31.4%増加となり需要を支えた。しかし4月以降市場は様子見に入り、輸入は減少した。IP/Georgetown工場の生産停止(▲30万㌧)に続き、Pixelle Specialty Solution/Chillicothe工場が8月10日に生産停止となり、供給は一層タイトになることが予想される。本年後半には約40ドル値上げとなる可能性がある。
コート紙は、第1四半期に在庫積み増しがあったが、第2四半期に入ると、関税交渉の行方への懸念から、市場の動きは硬直した。景気の減速や郵便料金値上げの影響で、第2~3四半期の需要は5~8%程度押し下げられると予想される。供給面では、需要が低調であるにもかかわらず、生産削減等により北米メーカーの供給状況はタイトである。価格については、輸入塗工紙の主要メーカーが、今後の交渉次第で、輸入関税上乗せ分を価格転嫁するかどうかが注目される。

[段原紙]
米国市場の第1四半期の段ボール出荷実数は、前年比▲2.1%の大幅減少となった。第1四半期の米国段原紙メーカーの生産量は、前年比+0.4%となったが、輸出は段原紙全体でこの間同▲7.7%の減少となり、輸出は4月以降も減少が続いている。特にKLBの輸出は大幅な減少となった(1-5月累計で同▲11.8%)。北米市場の段原紙の価格は横ばいで推移しているが、低調な需要での推移のなか、原紙メーカーが値下げ要望に応じるケースも見受けられる。関税関連で市場は依然として不透明で、段原紙の需給は過多の状態である。今年3月以降9月までに、段原紙約240万㌧の生産削減が実施される。

欧州市況(7月度)

[新聞用紙]
6月の新聞用紙市場では、2Q契約分の価格が維持されている。需要は低位安定だが、中質系印刷用紙からの代替需要で比較的堅調である。平均稼働率は85-90%で推移しているが、コスト高の中で価格転嫁は厳しい状況。アジア向け輸出が低調な北米メーカーが、欧州市場で存在感を増しており、3Q交渉で価格下落の懸念がある。

[上質紙]
コピー用紙の需要が春以降低調、6月にはドイツ・フランスで€20-30の値下がりが見られた。南欧でも同様に値下がりが続いている。アジア品の流入が続き、値下げ基調が加速している。オフセット用もイタリアで€20下落、ドイツ・フランスで平判は€20程度下落。供給過多が続いており、市況の安定には生産能力削減が必要である。

[コート紙]
中国のパルプ価格下落が欧州にも波及し、6月にコート紙価格の下落が顕著になった。ドイツでは€20下落、フランス・スペインでは€10-20下落、イタリアでは最大€40の下落となった。夏場の非需要期には、価格対応も受注増に繋がらないため、供給サイドは価格変動を避けたいというのが本音である。市場は暫く硬直した動きを予想している。

[段原紙]
テストライナーがドイツ・フランスなどで前月から€40程度の値上げとなり、UK・スペインも横ばいで安定しているが、イタリアでは逆に最大€40の下落が見られる。これは新たに稼働したMondi/Duino工場の影響とみられる。クラフトライナーも一部で値上げが見られるものの、南欧市場では北米品の価格が据え置かれており、今後の段原紙の市況動向への影響が懸念される。

中国・香港・東南アジア市況(7月度)

[上質紙]
中国市場では、春先の出版用途需要が終わり、全体的に低調な荷動きが続いている。紙商は過剰在庫に苦しみ、安値での在庫投げ売りが見られる。パルプ価格の下落により先安感が広がり、需要回復の兆しはない。
香港市場でも、春の需要期が終わり、荷動きが鈍化している。中国メーカーの生産増強により供給余力が拡大している。パルプ価格の下落から、中国メーカーは7月生産より再度値下げを行っており、市況は軟化傾向が続くと予想される。

コート紙
中国市場では、印刷業者が必要な分だけを手当てする当用買い姿勢を続けており、紙商の在庫は概ね高止まり状態にある。パルプ価格の下落で市場価格は下落基調にある。メーカーは値上げ意向があるが、実需が伴なっておらず、価格は一段安となっている。
香港市場では、需要の低迷とパルプ価格の下落により市況は軟調である。中国メーカーが7月生産から再値下げを行い、価格低落がこの先も続く見込みである。米国向け出版物の再輸出品は関税政策の影響で取引が保留され、需要に影響を与えている。

板紙
中国市場の段原紙は、季節的な非需要期とEC商戦が低調であった影響で、内需が冷え込んでいる。市況の回復は暫く見込まれない。
香港市場では、アイボリーは中国メーカーの供給過剰で、市場価格の下落が続いている。白板紙は旧正月明け以降価格が下落しており、原料古紙の値上がりで一時的に価格上昇したものの、需要低迷により再び値下げに転じている。

東南アジア市場
東南アジア市場の紙板紙市場は、学校休業期間と長期休暇の影響で企業活動の停滞により、需要が減少している。印刷会社は機械設備を手放し、アウトソーシングや取次業務に焦点を当てる動きが増加している。米国との関税問題が紙需要に不確実性を与え、市況は価格の下落を伴う状況が続いている。市場価格は前月水準から更に軟化し、供給過多と在庫過剰により苦しい状況が続いている。

【統計】5月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年5月の紙・板紙合計輸出は14万604トン(前年比12.6%減)、輸入は7万3,032トン(同0.8%増)となった。国内需要は153万9,478トン(同2.8%減)となった。
内需no
内需、輸出減、輸入増の傾向が続いた。

【統計】5月 米国輸入状況

米国の2025年5月の紙・板紙の輸入は合計58万5,063トン(前年比4.7%減)、金額は6憶4,029万5千ドル(同5.3%減)となった。そのうち印刷用紙合計は24万7,839トン(同5.0%減)、金額は2億6,867万4千ドル(同8.5%減)と減少に転じた。
同1-5月累計は紙・板紙合計で310万8,925トン(同6.3%増)、34億3,831万9千ドル(同7.0%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

【資料米国関税動向

米国トランプ大統領が公表した主要国に対する相殺関税は以下のとおり。(2025年7月22日現在)

Japan 15%, Philippines 19%, Indonesia 19%, Vietnam 20%, United Kingdom 10%, European Union 30%, Mexico 30%, Canada 36%, Brazil 50%

(参考)以下の国の2024年米国紙・板紙合計輸入額

Japan 4,362万2千ドル(関税額推計654万3千ドル)

Indonesia 2億4,834万1千ドル(同4,718万4千ドル)

Vietnam 3,676.0万ドル(同735万2千ドル)

紙類紙類海外動向レポート
2025年第4号 2025年7月

Contents
海外動向トピックス
欧州市況(6月度)
北米市況(6月度)
中国・香港市況(6月度)
【統計】4月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】4月 米国輸入状況
【資料】The Great Trade Hack トランプ貿易戦争の失敗と世界の動き


海外情報トピックス

*ベトナムにおける再生段原紙の増産の動き
ベトナム北部では、旧式で小規模な製紙マシンを使用して低品質の段ボール原紙や家庭用紙を生産している多くの国内メーカーが、政府の環境基準を満たさない生産を行っていることが問題となっている。この状況に対し、ベトナム製紙連合会は、2024年度末を期限として、約200社(約100万トン)の生産設備の廃止を地方政府に命じた。この動きにより、特に北部地域で再生段原紙(中芯)の供給が急激にタイトになり、輸入紙の増加とともに新マシンの増設計画が加速している。
具体的な増産計画として、Toan Cau Paper社はHai Duong省の既存工場に新たな再生段原紙のマシンを導入し、2026年中の稼働を予定している。この新マシンは年産10万トンの生産能力を持ち、主に米坪60-120gsmの中芯を生産する。また、KORO Vietnam Paper Join StockもThanh Hoa省の工場に新マシンを増設し、年産10万トンの再生中芯を生産する計画である。
さらに、Miza Corp.はThanh Hoa省Nghi Son工場で年産14万トンの再生段原紙の建設を進めており、今年後半の稼働を予定している。GDT Paper Joint Stock Co.もNam Dinh省Bao Minh工業団地に年産30万トンの新マシンを導入し、2026年の稼働を目指している。
これらの動きは、環境基準を満たさない旧式設備の廃止に伴う供給不足を補うためのものであり、ベトナムの製紙業界における生産設備の更新と増産計画が活発に進められていることを示している。

*マレーシア;段原紙供給過剰による生産削減の動き
・供給過剰の背景
2020年以降、マレーシアでは約310万トンの再生段原紙の新マシンが導入され、国内生産能力が2019年度比で約3倍に拡大している。この急激な生産能力の増加は、中国が自国での古紙輸入を禁止したことを契機に、中国の大手段原紙メーカーがマレーシアを含む東南アジア諸国に生産拠点を設けたことが一因である。
・市場価格の下落
生産能力の急増により、マレーシア及び周辺地域での段原紙の供給が過剰となり、製品の市場価格が下落している。価格の下落は、メーカーの収益性を圧迫し、業績の悪化を招いている。
・原材料価格の高騰
中国の古紙輸入禁止により、古紙(OCC、ONP)の価格が高騰している。原材料費の上昇は、製造コストの増加をもたらし、メーカーの利益をさらに圧迫している。
・メーカーの生産停止
市況の低迷により、マレーシアの段原紙メーカーは生産停止を余儀なくされている。例えば、Pascorp Paper Industriesは2025年8月に生産を永続的に休止することを発表している。他にも、マレーシア唯一の新聞用紙メーカーで中芯も併抄するAHP(Asian Honour Paper)や段原紙メーカーのUPP Pulp & Paper(M)などのメーカーが昨年後半に生産停止を行なっており、業界全体でこのところ生産停止が相次いでいる。
これらの要因が重なり、マレーシアの段原紙市場は供給過剰による深刻な市況悪化に直面しており、メーカーは生産停止や事業ポートフォリオの見直しを迫られている。

北米市況

[新聞用紙]
北米市場の新聞用紙の需要は、1-2月の当初輸入関税懸念による前倒し需要から、徐々に従来の脆弱な需要トレンドに戻りつつある。全出荷に対し極めて高い比率の輸出が、本年1-4月では前年比▲15%近く減少しており、北米の需給バランス構造が崩れつつある。関税問題で応酬が激しさを増す中国向け、また欧州向けの輸出が大幅減となっている。本年度の北米市場の需要は同▲14-5%減と予想されており、需給バランスを保つには本年度は更に40万㌧程度生産削減が必要との見方がある。

[上質紙]
輸入関税の影響が不確実な中、輸入品中心に在庫確保による需要が進み、1Qは北米メーカーの出荷が同▲5.6%に留まる一方で、輸入が同+42.2%となった。北米メーカーの出荷は低調だが、IP/Georgetown工場(30万㌧)の生産停止で供給状況はタイトで、4月の生産稼働率は91%に上昇した。年初打ち出された価格は、4月までに$40-受け入れられた。4月以降ユーザーには様子見の姿勢が広がり、市場は幾分硬直気味である。夏の非需要期に向い、荷動きの鈍化が懸念される。

[コート紙]
輸入関税絡みの先行き市況への懸念から、1Qは在庫積み増し需要が見られ、特に3月は上質コート紙の輸入が、過去3か月の平均よりも50%も増加した。国内メーカーからの出荷は依然低調だが、Sappi/Somerset工場2号機(24万㌧)等の大幅な削減により、供給は概ねタイトである。米㌦安で輸入紙には値上げ圧力がかかりやすくなっていること、また7月の郵便料金の再値上げで、カタログ・広告等の需要への影響が懸念され、今後の動向に注視が必要である。

[中質紙]
1Qは需要が好調に推移した。欧州が中心となる輸入紙の比率は低く、また出荷の多くは実質関税ゼロのカナダの工場からとなるため、輸入関税の影響は印刷用紙で最も受けづらく、比較的安定した市況が期待できる品種である。

[段原紙]
米国の1Qの段ボール実出荷量は前年比▲2.1%の減少となった。段原紙の生産はこの間微増だが(+0.4%)、輸出は減少に転じており(▲7.7%)、特に米国との貿易摩擦が増大している中国向けは約▲40%と低調である。関税問題の今後の行方は不透明で、輸出の減少も懸念材料となり、供給過多が市場では負担となってきている。今年に入り8月までに合計230万㌧程度の段原紙の生産停止が実施、または予定されており、今後の需給変化への対応には注視が必要である。

欧州市況

[新聞用紙]
5月の新聞用紙価格は2Q契約価格が維持され、前月と横ばいとなった。需要に回復は見られず、メーカーの稼働率も低迷しているため、欧州メーカーは古紙、電力等コスト増を価格への転嫁が必要だが、3Qの値上げの意向を積極的に打診しづらい状況である。

[非塗工上質紙]
メーカーの値上げも、4月は結果的に値下がりに終わり、交渉は5月にも持ち越されたが、5月も前月横ばいとなった。コピー用紙の需要は春以降低調で、オフセット印刷用も教育分野の需要が続かず厳しい状況。輸入関税交渉の不透明さが市場に影響し、アジアのメーカーが積極的に販売を行なっている。

[コート紙]
4月以降のメーカーの価格修正は断念となり、交渉は5月に持ち越されたが、5月もなんとか横ばいで留まった。紙需要は低調で、メーカーの稼働率は依然として低調である。中国市場ではパルプ価格が下落し、その影響が欧州市場にも及び始めている。Kabel Premiumが倒産し、投資先も見通しが立たず生産は停止となった。ロトグラビア印刷用途の欧州メーカーとしてはUPMのみが残る。

[段原紙]
テストライナーはドイツ・フランス市場で€40-50の値上げが受け入れられたが、他市場では概ね横ばいとなった。
クラフトライナーの値上げ交渉は持ち越し。南欧市場ではドル安が影響し、北米品の値上げ姿勢は消極的なため、欧州市場の値上げ交渉への影響が懸念される。新マシンの稼働で今春以降年産150万㌧弱が追加され、市況軟化の加速が懸念される

中国・香港市況

[上質紙]
中国市場では春先の出版用途の需要が落ち着き、全体的に低調な状況である。紙商は在庫過多に悩んでおり、安値販売が見られる。パルプ価格の下落により、市況にも先安感が広がっている。
香港市場も同様に低迷しており、パルプ価格の下落と供給能力の増加が予想されていることから、市場価格も低位に推移することが見込まれる。

[コート紙]
中国市場では印刷会社が当面必要な分だけを購入しているため、紙商の在庫は高め基調となっている。パルプ価格の下落により、製品価格も下方圧力が強くなっている。
香港市場でも紙需要とパルプ価格が低迷しており、今後夏場の非需要期に向い、需要の回復は厳しいと見込まれている。値上げを模索するメーカーもあるが、需要の回復が見られず、受け入れは難しい状況である。

[板紙]
中国市場では段原紙の需要が依然低迷しており、特値対応も見受けられるが荷動きに繋がっていない。5月に入り、米中間の関税交渉で暫定的に緩和されたことにより、在庫補充の動きも見られた。古紙買い取り価格の上昇で、製品価格への転嫁も始まったが、実需の盛り上がりには繋がらず、価格は横ばい基調で進んでいる。

香港及びその他アジア市場では、アイボリーの価格が過去最低水準で推移しており、白板紙は古紙価格の上昇もあり若干反発したが、需要の低迷は相変わらず続いている。

【統計】4月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年4月の紙・板紙合計輸出は15万3,655トン(前年比11.2%減)、輸入は7万1,113トン(同4.5%増)となった。国内需要は161万421トン(同0.8%減)となった。
内需とともに輸出が減少した。

【統計】4月 米国輸入状況

米国の2025年4月の紙・板紙の輸入は合計59万1,218トン(前年比6.9%増)、金額は6憶9,480.0万ドル(同14.8%増)となった。そのうち印刷用紙合計は25万82トン(同5.2%増)、金額は2億9,578万8千ドル(同11.3%増)となった。
同1-4月累計は紙・板紙合計で252万3,863トン(同9.3%増)、27億9,622万5千ドル(同10.3%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

【資料】The Great Trade Hack トランプ貿易戦争の失敗と世界の動き

トランプ大統領就任後、関税の導入で各国との協議が継続され、今後の動向が懸念されるところ、本邦紙業界にも直接的、間接的な影響の可能性はあるが軽微にとどまるのではないかとの見方もある。

Richard Baldwin氏はThe Great Trade Hack: How Trump’s Trade War Fails and the World Moves onをCentre of Economic Policy Research(CEPR)から上梓した。

(抜粋)

そのなかで、米中の紛争は貿易戦争ではなく、米国の市場主導資本主義と中国の国家主導資本主義との相違によるシステム衝突であるとした。

また、米国は1980年代に自動車、半導体、鉄鋼の主要分野における同様の脅威を日本から受けたが、日本が重要な軍事同盟であり、極東における防壁であったことが違いであるとした。

そのうえで、米中システム衝突の解決策として次のように述べた。

  • 現実的な目的 システムの変更ではなく達成可能な目標を定める。
  • システムの相違を受け入れる 中国の経済モデルを認識し、消さない。
  • 対話の機会を設ける 継続的な交渉の場をつくる
  • 国内への投資 産業育成、革新、労働生産性の向上をはかる。
  • 長期的な視点 世代を受け入れ、急な勝利を求めない。

本書は以下に公開されています。

https://cepr.org/publications/books-and-reports/great-trade-hack-how-trumps-trade-war-fails-and-global-trade-moves

紙類海外動向レポート
2025年第3号 2025年6月

Contents
海外動向トピックス
欧州市況(5月度)
北米市況(5月度)
中国・香港市況(5月度)
【統計】3月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】3月 米国輸入状況
【資料】2024年中国段ボール原紙新増設


海外情報トピックス

*北米における非塗工上質紙の生産削減
米国のPixelle Specialty Solutionsは、オハイオ州のChillicothe工場を閉鎖し、同工場での非塗工上質紙の生産を削減することを発表した。この工場では年間40万トンの非塗工上質紙が生産されており、北米市場における大幅な生産能力の削減となる。昨年末にはInternational PaperのGeorgetown工場(サウスカロライナ州)が閉鎖され、約30万トンの上質紙系の生産が削減されており、これに続く動きである。IP/Georgetownの減産により、北米の上質紙の供給は引き締まり、年初より価格上昇基調にあり、3-4月に累計で$40-の値上がりとなった。3月度の北米メーカーの稼働率は93%(昨年は88%)と急速に改善している。

北米市場の需給バランス改善が期待される一方で、関税問題は現在90日間の発動保留期間にあり、今後の進展は各国との交渉に委ねられているが、輸入品の供給に懸念をもたらす可能性があるため、即座に政府関係者と企業側は、Chillicothe工場の長期的な再建の道筋を探るべく、とりあえず閉鎖することを「一時停止」し、年末までは操業を継続することを、上記の発表から数日後に改めて発表しなおした。

北米の非塗工上質紙の生産量は、2023年度の630万トンから2024年度末には590万トンへと約5%削減となった。本年度は、IP/Georgetown工場の閉鎖(とPixelle/Chillicothe工場が年末までに閉鎖となれば)520万トン程度にまで減少する見込みである。今後の輸入関税の動向と北米メーカーの供給状況への注視が必要である。北米の上質紙メーカー毎の生産量は、Domtarが首位で195万トン(全体の37%)、Sylvamoが132万トン(25%)、PCAが50万トン(9%)、Pixelleが33万トン(6%)となっている。

*欧州市場における段原紙の新マシン稼働
オーストリアのHeinzelグループは、Laakirchen Papie工場での11号機を再生段原紙に転抄する計画を進めていた。当初は2023年半ばの稼働を予定していたが、コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などの影響で度々延期されていた。しかし、本年4月上旬にようやく稼働に漕ぎつけた。生産能力は当初の年産55万トンから47万トンに下方修正されたが、2026年度中にはフル生産を目指している。ターゲット市場はオーストリア、イタリア、ドイツ、ポーランドなどである。

欧州市場では、今年度中に複数の段原紙の新マシンの稼働が予定されており、市況の一層の軟化が懸念されている。フランスではNorske SkogのGolbey工場1号機が新聞用紙から転抄し、4月末に稼働した。また、イタリアのMondiのDuino工場も第2四半期中に稼働を控えている。また更に2026年以降に稼働が後ろ倒しとなっているものもあり、これにはDS Smith&IP新会社のPorcari工場(イタリア)/Eren Paper(親会社トルコModern Karton)のShotton工場(英国)/Hamburger Container(トルコ)/Stora EnsoのLangerbrugge工場(ベルギー)などが含まれる。

*欧州委員会(EC)によるEUDRの実施要項の簡素化
欧州委員会(EC)は、昨年12月30日に発令された森林破壊防止規制(EUDR)の実施を容易にするため、規制の簡素化を行った。ECはガイダンス文書と頻出質問事項を更新し、大企業がEU市場内で流通した商品を再輸入する際に、既存のデューデリジェンス報告書(DDS)を使用できることを認めた。また、輸入の都度DDSを提出するのではなく、年度ごとの提出を義務付けることや、サプライヤーから入手したDDSの参照番号を記載することで提出できることも認めた。これにより、企業側の管理コスト負担が約30%軽減できると期待されている。ECは最終的に実施細目を法制化し、各国ごとのカントリーベンチマーク制度を導入することを目指している。

*北米における段原紙の生産削減
北米における段ボールの需要は、2022年以降減少傾向にあり、今年に入り第1四半期も実出荷量で前年同期比▲2.1%と低調に推移している。この需要の低迷は、供給過多にある段原紙生産メーカーに大きな影響を与えている。

段ボールの需要減少に伴い、北米の段原紙生産能力はここにきて大幅に削減が行われている。2023年末から2025年8月までの約20か月間で、約300万トンの生産能力が削減される予定である。具体的には、2023年末にInternational Paper (IP)がテキサス州のOrange工場で80万トンの生産を停止、今年に入ってからIPはルイジアナ州のRed River工場でも80万トンの生産を3月に停止した。さらに、Griefがマサチューセッツ州のFitchburg工場で約10万トンの再生段原紙マシンを5月に停止する予定である。直近では、IPと並び世界最大手の段原紙メーカーSmurfit Westrockも、7月にテキサス州のForney工場で38.5万トンの再生段原紙の生産を停止、またGeorgia Pacific(GP)のジョージア州Ceder Springs工場でも、8月までにKLB/中芯合計102万トンの生産停止が発表された。

これらの生産能力削減は、段ボールの需要が低調であることに直接結びついており、メーカーは市場の実需に対応するために生産を調整している。段ボールの需要が回復する兆しが見られない中、段原紙の生産能力削減は今後も続く可能性がある。

北米市況

「新聞用紙」
北米市場の新聞用紙の需要は減少し、第1四半期の見かけの消費は前年比▲6.6%となった。
北米メーカーの生産量も減少しているが、輸出が全出荷の51.2%を占めており、輸出への依存度が依然として高い。カナダ品の輸入関税懸念は緩和され、供給リスクは減少したが、需要は依然低調である。2024年度の米国市場の需要は約90万㌧、そのうちカナダからの供給が半分を占める。輸出の減少が続けば更に生産能力の削減が必要となり、輸出動向に注視が必要。

[上質紙]
米国市場では輸入関税の影響で不確実性が高まり、第1四半期は輸入品で在庫確保が進んだ。第1四半期の需要は前年比▲0.6%で、輸入品は需要の15.2%を占めた。生産稼働率は急速に改善したが(3月は93%)、生産削減による供給の引き締まりが背景にある。値上げは3-4月で段階的に$40-程度受け入れられた。その後の価格修正の動きは見られない。

[コート紙]
コート紙の需要は依然として減少しており、カナダ・その他アジアからの輸入品への依存度は高い。北米メーカーの生産稼働率も改善しているが(3月は86~92%)、これも上質紙同様、生産能力の大幅削減によるもの。関税問題の影響は発動の保留後、現在一時的に小休止しているが、今後は為替の動向(ドル安傾向)が輸入品の価格に影響を与える可能性が大きい。早速欧州系メーカーは価格上乗せを発表、値上げ圧力が強まることを予想。

[中質紙]
第1四半期の需要は前年比▲0.3%で、好調だった昨年同期同様好調である。カナダ工場からの出荷が80%以上を占め、その他の輸入品の割合は低く、関税問題の影響は受けづらい。他の印刷用紙からの代替需要も期待され、比較的安定した市況を予想する。

[段原紙]
米国の段ボール実出荷量は第1四半期が前年比▲2.1%と減少となった。段原紙の生産はこの間微増だが(+0.6%)、輸出は減少しており(▲7.7%)、特にメキシコと中国向けは低調。
段原紙の値上げは2023年後半以降累計$120-に及ぶが、ユーザー側の抵抗が強くなり、段ボールへの価格転嫁は進んでいない。段原紙の供給過多は負荷となっており、ここにきて急速に生産能力の削減が進められており、今後の需要動向と供給環境に注視が必要。

欧州市況

[新聞用紙]
第2四半期の契約交渉では、価格は第1四半期比でほぼ横ばいの決着となった。欧州メーカーは原燃料等コストアップ分を価格に転嫁しようと試みたが、低調な需要とカナダ品の攻勢等により、方針の変更を余儀なくされている。

[非塗工上質紙]
BurgoやSappiなどが4月以降の価格引き上げを打ち出したが、需要の低迷、供給過多に加えて、米国の追加輸入関税発動による市況への更なる影響を懸念し、ユーザー側でも様子見の姿勢が窺われるようになった。主要市場で逆に価格は下落しており、値上げは5月に持ち越されるも、市況は低調で非常に厳しい状況が予想される。

[コート紙]
Burgo、Lecta、Sappiなどが4月分以降の価格修正を発表したが、需要は依然低調で、値上げは事実上断念せざるを得ない状況となった。4月度はなんとか価格は現状維持に留まった。
メーカーの稼働率はコート紙全体で概ね75%前後で推移している。
Kabel Premiumが再建を目指し生産を再開したが、売却先の有無が注目されている。

[段原紙]
テストライナーはスペイン・英国等で3-4月になり今年初めて値上げが実現したが、ドイツ、フランスでは2月に続く4月の再値上げはユーザーの抵抗で難しい状況で、持ち越しとなった。クラフトライナーも値上げを表明しているが、南欧地区でドル安を背景に北米品が値上げを実施しておらず、こちらも持ち越しとなった。

中国・香港市況

[印刷用紙]
中国市場のコート紙は、雑誌・カタログの需要は減少が続いている。米中貿易摩擦による相互追加関税の発動が、市場にどのような影響を及ぼすかは全く不透明であり、市場は一様に様子見ムードが広がっている。紙市況が依然として低調で、パルプ価格にも下落の兆候が表れていることから、現状値上げが難しく、逆にユーザーからの値下げ要求に応じるケースも見られる。香港市場では、旧正月明けに値上げアナウンスがされたが、需要低迷が続き、ユーザーからの値下げ要求が強まった。パルプ価格も下落の兆しがあり、市場価格は下振れしやすくなっている。米国の関税問題の影響で、注文取り止めも出始め、需要の一層の減少が深刻である。
中国市場の上質紙は、印刷需要がデジタル化の影響で緩やかに減少が続いている。構造的な市況低迷に加え、米中貿易摩擦が印刷物の輸出案件にも影響しており、更に低調な状況が加速している。国内パルプの小売価格、輸入パルプともに価格に下落が見られ、平均価格は概ね軟化傾向にある。香港市場では、春先の出版物関連の需要も最盛期であるにも関わらず低調で、荷動きも停滞している。メーカー・流通業者ともに、受注を削減、在庫の削減を優先せざるを得ない状況で、価格は更に下落している。

[段原紙及び板紙]
中国市場では、4月前半に古紙パルプの価格が上昇し、中芯・ライナーの値上げが各メーカーから発表された。しかし、米中貿易摩擦の影響から段ボール需要は低迷しており、ユーザー側が積極的に在庫の積み増しをしないため、荷動きは非常に低調で、段原紙の価格は更に下落となった。追加関税の行方により、今後の市場動向には依然として不確定要素が多く、心理的な不安から、在庫削減を優先する傾向にあるため、市況は暫く軟化基調に推移すると予想される。
香港市場では、アイボリーの需要が減少、供給過多となっているため、サプライヤーはユーザーからの値下げ要求に応じざるを得ない状況である。流通側は米中貿易摩擦の影響で、在庫削減を優先するため、暫く値下がり基調が続く見通しである。白板紙はアイボリー市況と同様、旧正月明け以降価格は下落しており、4月に更に大きく下落となった。原材料の古紙は比較的安定した価格推移となっているが、販売価格の引き上げは難しく、メーカーの採算は一層厳しくなっている。

【統計】3月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年3月の紙・板紙合計輸出は18万3,765トン(前年比0.7%増)、輸入は7万2,779トン(同9.2%増)となった。国内需要は163万2,701トン(同0.8%減)となった。
内需の減少で輸出、輸入ともに増加した。

【統計】3月 米国輸入状況

米国の2025年3月の紙・板紙の輸入は合計74万8,630トン(前年比22.5%減)、金額は8憶859万5千ドル(同24.8%増)となった。そのうち印刷用紙合計は30万7,013トン(同22.7%増)、金額は3億4,121.0万ドル(同22.1%増)となった。
同1-3月累計は紙・板紙合計で174万9,679トン(同10.4%増)、21億4,257万1千ドル(同11.1%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

【資料】2024年中国段ボール原紙新増設

単純に昨年の生産量の7-9%の増産があることとなるが、稼働率から考えれば、生産能力としてはそれ以上のところに、更に増産となる。ライナーでは大手メーカーは幾分影を潜め、新規企業による参入、増産もあるとみられる。

紙類海外動向レポート
2025年第2号 2025年5月

Contents
海外動向トピックス
欧州市況(4月度)
北米市況(4月度)
中国・香港市況(4月度)
【統計】2月 「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
【統計】2月 米国輸入状況
米国関税関連報道


海外情報トピックス

中国;ナインドラゴン 北海・荊州の大規模増産計画 非塗工上質紙の新マシン稼働
中国最大の紙板紙メーカー、ナインドラゴン(Nine Dragons)は、湖北省の荊州工場と広西チワン族自治区の北海工場で新しい非塗工上質紙の大型マシンを稼働予定。荊州工場では3月末に合計60万トン、北海工場では6月末に70万トンの生産能力を持つマシンが稼働する。この新マシンの稼働により、中国の印刷用紙市場の供給過剰がさらに悪化する懸念があります。

市場では、春節前後に各メーカーが長めの停機を行ったことで需給バランスが改善し、パルプ価格の底打ちに伴い2月に約200元の値上げが行われた。しかし、需要は低調で、市況の回復は遅く、価格修正はユーザーに受け入れられていない状況。市場価格の下方圧力が続く懸念がある。

中国;山東晨鳴紙業グループ 2工場でマシンが再稼働(コート紙及び高級板紙)
山東晨鳴紙業は、財政悪化と過剰生産の影響で、昨年11月に生産能力の70%以上を停止していたが、3月中旬に山東省寿光工場(コート紙マシン)と江西省南昌工場(コートアイボリー)を生産再開した。南昌工場は昨年12月に一時再開したものの、すぐに停止していた。また湖北省黄岡工場のパルプ生産は継続中で、吉林省吉林工場と広東省湛江工場は依然停止している。

インド;ITC社 Century Pulp & Paperの買収
インドの複合事業体企業グループ、ITC Ltd.は、Aditya Birla Real Estate Ltd(ABREL)から紙パルプ事業のCentury Pulp & Paper(CPP)を約349.8億インドルピー(約4.1億ドル)で買収することで合意した。この買収で、ITCはインド北部Uttarakhand州LalkuanにあるCPPの工場を含め、年産48万トンの生産設備を獲得する。ITCは南インドで約100万トンの板紙事業中心に展開、CPPの買収で印刷用紙、衛生用紙部門を加え、事業規模の拡大とポートフォリオの多様化を図る。衛生用ティッシュ紙分野への参入は初めて。

インド;中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング課税中間見直しに結論
インド商業産業省は、2021年12月に中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング課税を導入し、5年間の適用期限を2026年末とし現在運用中。この課税の適用実態につき、2024年3月以降中間期調査を開始、2023年4月から翌年3月の期間に付きレビューを実施した。その結果、最大手メーカーのKingdecor(Zhejiang)社に対し、課税額が従来の$116/mtから$542/mtに見直した。Shandong Boxing Ouhua Specialty/Zibo OU-Mu社には$110/mt、その他のすべてのメーカーには$542/mtが従来通り課されることとなった。対象の化粧板原紙は米坪40-130gsm、HS Codeは48059100および48022090。中国製化粧板原紙に関しては、欧州委員会(EC)もダンピングの疑いで調査を行ない、該当メーカーに対し31~34.9%の暫定税率を課す決定を下している。

北米市況

[新聞用紙]
1月から2月の新聞用紙は、関税の導入を前にカナダからの供給が増え、米国内の荷動きも好調であった。当初米国は、カナダに対し25%の追加関税導入を予定したが、4月上旬に90日間の保留となった。USMCA(米・カナダ・メキシコ3ヶ国協定)もあり、現状これら3か国間の紙板紙の取引は、実質ゼロ関税扱いとなっており、市場の不安感は一時的に緩和されている。関税実施に備えて、一時カナダと米国のメーカーは値上げの動きも見せたが、関税措置の保留により、値上げは棚上げとなっている。

[上質紙]
1月以降出荷分に対し、メーカー各社は5-8%(約$60)の値上げを発表したが、2月に入り、約$30の値上げが受け入れられ、3月は横ばいで推移した。相互関税発動を前に、2-3月の荷動きは堅調で、特に1-2月の輸入量は前年比57%増の15万トンとなった。しかし、関税措置発動の保留により、輸入コピーでは値下げによる発注確保の動きも見られるなど、市況への混乱も懸念されている。

[コート紙]
1-2月の北米の上質コート紙の需要(見かけの消費)は前年比▲4.4%減となった。関税措置による先行き不安から、北米メーカーの出荷は前年比▲7.7%減、輸入も同1.5%増に留まるなど低調な動きとなった。2月以降の契約分に対し、大手メーカーは$50の値上げを発表、3月末までに$25-50が受け入れられた。北米市場のコート紙は、輸入紙への依存度が高く、今後の関税措置の動向次第で、市況への影響が大きく左右されると予想される。

[中質紙]
北米の中質紙生産の80%以上はカナダからのもので、カナダからの供給状況は米国の市況に大きな影響を与える。カナダ品は現状実質ゼロ関税であり、米国市場ではカナダ品が欧州品よりも有利になると予想されるため、比較的安定した市況推移が見込まれる。1-2月は関税措置発動を意識した荷動きもあり好調であった。新聞用紙同様、カナダメーカーからは値上げの動きがあったが、関税措置保留で値上げは様子見となっている。

[段原紙]
段原紙は昨年度2度の値上げ($80-100)があり、今年2月も$40の値上げとなった。段ボールの1-2月の荷動きは低調で、3月も相互関税の発動が近づく中、原紙の発注には慎重な姿勢が見られた。また1-2月のKLBの輸出は前年比▲10%減となり、特に米国と関税の応酬が続く中国向けが▲38%の激減となった。段原紙は北米からは純輸出アイテムで、今後、関税の動向による世界レベルでの貨物の流れの変化、北米からの段原紙の輸出の動向の注視が必要である。

欧州市況

[新聞用紙]
多くの契約期間が3か月または6か月であり、3月度の価格に変化は見られない。新聞用紙メーカーの稼働率は90%近くにまで改善しているが、原料古紙、電力価格の高騰で、一部の工場では操業停止を余儀なくされている。第2四半期の価格交渉では、メーカーは8-10%の値上げを提示している。米国での関税問題が影響し、カナダのメーカーから積極的なオファーが見受けられる。

[印刷用紙]
上質紙は3月で概ね€10-程度下落となった。景気の低迷と米国の関税措置の影響から、欧州市場にも不透明感が出ており、市況は軟化が加速することが懸念されている。Burgo/Sappi等の大手メーカーが4月からの価格引き上げを発表している。また、ポルトガルのNavigator/Setubal工場が、上質紙(年産18万㌧)からクラフト紙への転抄の計画を明らかにした。

上質コート紙の3月価格は横ばいで推移した。生産コストの上昇、長引く需要の低迷で、メーカーの採算の改善が求められ、Lectaが4月から6-8%の値上げを発表した。

[段原紙]
TLBは2月に主要市場で€80-程度値上げ、3月は安定している。
他市場(イタリア・スペイン等)では3月に€30-50程度の値上げをした。
古紙価格高騰でSaicaなどが4月以降再値上げを発表した。
KLBはTLBの値上げを受け3月から€80-の値上げをした。
北米からのKLB供給は関税問題でユーザーに不安と警戒感がある。

中国・香港市況

[印刷用紙]
中国市場における印刷用紙市場は、3月に一部の大手メーカーが値上げ(+200元/㌧程度)を発表し、価格上昇の兆しが見られたが、月後半になると、パルプの在庫販売価格に軟化の兆しが出始め、需要も価格を下支えできるほどの力強さはないため、製品価格上昇への意向が持続できるかが不透明な状況となった。上質紙ではナインドラゴンの新しい上質紙マシンの稼働が近づき、市況の軟化が懸念される。

香港市場では、チェンミン紙業の昨年末からの操業停止の影響で、各社の値上げが行われてきたが、旧正月前後の市場低迷により、市場への影響は極めて限定的となっている。春先の本来の需要期にもかかわらず、荷動きは低調で、加えて米中間の報復関税の影響で、大手印刷会社を中心に影響が増大している。

[段原紙ほか板紙]
中国市場では、段原紙市況は低迷が続いている。原料古紙の価格も下落傾向にあることから、メーカーはユーザー側からの値下げの圧力への対応を余儀なくされている。採算悪化で原紙の値上げは急務であるが、需要が圧倒的に低迷しており、少なくとも価格の維持を図るべく模索している。米中間の関税の応酬が激化しており、この先さらに値下げ圧力が強まることが懸念される。

香港市場の箱用白板紙は、アイボリーは年末以降も引き続き値上げが画策されてきたが、春節を跨いで低調な需要が回復せず、増産の連続による供給過剰で市況に改善の兆しは見られない。

白板紙からアイボリー等への切り替えが進んでおり、需要も大幅に縮小している。

【統計】2月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)

2025年2月の紙・板紙合計輸出は16万268トン(前年比5.8%減)、輸入は6万7,909トン(同8.1%増)となった。国内需要は146万3,441トン(同3.5%減)となった。
国内需要の減少が貿易バランスに動きを示した。

【統計】2月 米国輸入状況

米国の2025年2月の紙・板紙の輸入は合計54万5,342トン(前年比3.5%減)、金額は6憶146万7千ドル(同2.2%減)となった。そのうち印刷用紙合計は21万9,335トン(同4.4%減)、金額は2億4,145万2千ドル(同5.7%減)となった。
同1-2月累計は紙・板紙合計で121万4,015トン(同3.7%増)、133億3,397万6千ドル(同4.1%増)となった。

組合員向けにTableauにて詳細データを掲載しております。

米国関税関連報道

「米国による追加関税及び各国との相互関税の問題は、紙・板紙にどの程度インパクトをもってくるのか、非常に不透明。カナダの製品に、現下は追加分の関税は免れているとはいえ、状況によっては米国のメーカーも、特定の品目で米国内の工場の稼働率を高めたり、カナダからの輸入するコスト増よりも自分たちのコストを抑えて、市場シェアを拡大するような動きも出てくるかもしれない。」

「一方、アジアの紙板紙市場では、韓国メーカーは、依然として北米への販売に暫く注力するのか、韓国国内需要増への“その辺の状況に応じて”対応していくということかと思われる。米国との間で報復関税が続く中国メーカーは、依然としてアジア各地で増販を図る(図らざるを得ない)だろうことから、市況は依然軟調に推移するだろう。アジアでも特に主要市場への影響が少ない地域、あるいはオセアニアなどに、上質紙、白板紙が攻勢をかけると考えられる。パルプ(特に米国産が殆どのフラッフパルプ)は、この関税の応酬でどうするか等が注目される。」

米国は1月30日、2月中にもコンピュータ部品、薬品、鉄、アルミニウム、胴、石油および天然ガスの輸入に対して関税を課すと発表した。これは先立って公表したカナダ、メキシコに対する25%、中国の10%の追加関税とは別のものになる。トランプ大統領はカナダ、メキシコ、中国からのフェンタニルの流入が止まらない限り課税を続けるとしている。(2/1)

ホワイトハウスのスポークスパーソンKush Desai氏は、カナダおよび他の相手国からの鉄およびアルミニウム輸入に対し、例外、除外なく25%の追加関税を課すと発表した。(3/12)

カナダは3月13日より206億ドルにのぼる米国製品に対し25%の追加関税を課すとした。それには鉄、アルミニウムのほかコンピュータ部品、スポーツ器具などが含まれている。EUは4月1日より米国産ウィスキー、オートバイ、モーターボートに対し50%の追加関税の策定を発表した。また、4月半ばから課す米国の菓子、鶏肉をはじめとする食品などの関税リストを策定した。(3/13)

トランプ大統領は4月2日から自動車、薬品、半導体製品などに対し相互関税を課すると宣言した。しかしながら、政府関係者はこれらの関税が4月2日に課されるかは流動的だと述べている。(3/24)

トランプ大統領は4月9日より100か国以上に対し第2次大戦以降最高率となる関税を発動した。
ベトナム、ラオス、カンボジアなど多くの東南アジア諸国は45%以上の税率で最も深刻な打撃をうけた。中国は84%の上乗せですべての中国製品の輸入には104%の関税率となる。
また、トランプ大統領2期以前の関税を含めた中国品の平均は125%となる。トランプチームは交渉しだいで関税の引き下げに応じるとしているが、今のところ何も達成していない。(4/9)

トランプ大統領は4月10日、およそ100か国に対する高関税を後退させた。10%の基礎関税は有効としながら、相互関税となる上乗せについては90日間猶予した。ただし、中国に対する125%の関税は「即時発動する」とした。(4/10)

数々のエコノミストは、トランプ大統領が国際的な関税の実効を延期したことにより、世界のリーダーは厳しい交渉を迫られると述べている。
二次トランプ政権による中国への関税は145%に増加し、最終的には減少の場合もあるが、すでに5,820万ドルにのぼる両国間の貿易の一部は停止の動きがでている。(4/11)

紙類海外動向レポート
2025年第1号 2025年4月

Contents
海外動向トピックス
中国香港市況(2-3月度)
欧州市況(2-3月度)
北米市況(2-3月度)
【統計】出荷・輸出入・国内需要状況(日本)
【統計】米国輸入状況


海外情報トピックス

中国の輸入関税延長
中国政府は、主要な紙板紙および紙加工品に対する輸入関税の免除措置を2025年末まで延長した。この措置は、2023年から始まり、2024年末まで延長されていたもの。対象は67種類の紙板紙で、KLB、クラフト紙、新聞用紙は従来のMFN税率が継続適用となる。中国国内の供給過剰、市況の低迷が続く中、輸入量への影響が注目される。

ロシアの輸出補助
ロシア政府は、非友好国への輸出に対する輸送費の60%を補助することを発表した。対象国にはEU、米国、日本などを含む。この措置は、2022年のウクライナ侵攻後の経済制裁に対抗するために始まり、2025年も継続となる。ロシアから中国への紙板紙とパルプの輸出が大幅に増加している。

米国:中国、ベトナム、タイからの輸入紙皿製品に対するアンチダンピング(AD)および相殺関税(CVD)
米国商務省は、それぞれ2024年6月と9月に仮裁定された暫定課税率の決定を受け、その後の審査を経て最終確定を行なった。
具体的な課税率は以下の通り:
1)アンチダンピング(AD)
中国: 267.63%~515.40%、ベトナム: Go-Pak Paper Productsに30.42%、その他のメーカーに165.27%、タイ: 5.57%~73.17%
2)相殺関税(CVD)
中国: 4.47%~295.08%、ベトナム: 5.53%~225.90%
対象HSコードは、4823.69.0040、4823.61.0040、9505.90.4000、9505.90.6000

EC(欧州委員会):中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング税暫定税率が確定
欧州委員会(EC)は、中国製の輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング(AD)税の暫定税率を確定した。
調査の結果、Hangzhou Huawang New Material Technology社に34.9%、Kingdecor (Zhejiang)には31%の税率が課され、Sunshine Oji (Shouguang) Specialty、Zibo Ou – Mu Specialty、Winbon Technocell New Materialsの3社にも34.9%が適用となる。
Koehler、Felix Schoellerなどの主要メーカーからの申し立てに基づいて調査が行われたもの。
対象となる化粧板原紙は、基準米坪30-150gsm、配分5-50%、樹脂吸収量20-200%、樹脂透過度3-80秒/100ml、幅300㎝以下のリール形状。
EUへの中国からの輸入量は2020年の4,618トンから2023年には24,436トンに急増しており、一方でEU内の需要は2021年の50.1万トンから2023年には37万トンに減少している。

フィリピン;輸入中芯の急増にセーフガード導入の是非を調査開始(フィリピン通商産業省)
フィリピン通商産業省の関税委員会は、海外からの中芯輸入急増につき、セーフガードの導入を検討するため調査を開始した。この調査はフィリピン製紙連合会(PULPAPEL)の申立てに基づいて行われ、対象HS Codeは4805.19.10、4805.19.90、4805.12.00等。調査は2019年から2023年の輸入実績に対して行われる。
フィリピンの輸入中芯は、2019年の74,984トンからコロナ禍で一時的に減少した後、2023年に89,311トン、2024年1月から6月までで93,000トンに達し、通年で185,910トンの見通し。主要な輸入国は日本、インドネシア、オーストラリア、ベトナムで、約40%が日本から。
(注)セーフガードの適用は、特定国からの輸入が急増し、国内産業に甚大な影響を与える、またはその恐れがある場合に、輸入制限や暫定的な課税措置を導入するもの。今回の中芯に対する調査は、関税委員会が昨年10月、輸入再生ライナー(2011年にセーフガードが初適用後、2020年6月に適用解除となった)に対し、その後の動向を追跡する中で、セーフガードの再適用の可能性を示唆して調査再開を行なっており(調査は継続中)、今回の輸入中芯に対する調査検討は、それと並行して進められることとなる。

欧州市場;段原紙の新マシンの稼働で市況への影響が懸念
欧州市場における段原紙の供給状況は、このところの新マシンの稼働により、大きな変化を迎えている。昨年春から秋にかけて、メーカー主導で段原紙の市場価格が€100以上上昇したが、その後需要低迷と供給過多を背景に、本年1月までに上昇分とほぼ同額の下落となっており、先行きも極めて不透明な状況となっている。
本年度中には更に複数の新マシンが稼働を迎える予定で、段原紙市況への影響が懸念される。本年の主な新マシンの稼働予定は以下の通り:
Norske Skog/Golbey工場(フランス) - 年産55万トン、1Q稼働予定・Heinzel Group/Laakirchen Papier(オーストリア) - 年産55万トン、4月稼働予定・Mondi/Duino工場(イタリア) - 年産21.5万トン、2Q稼働予定
これらの新マシンの稼働に先立ち、2023年にはNorske Skog/Bruck工場(オーストリア、21万トン)、VPK Packaging/Alzay工場(フランス、50万トン)等が稼働しており、低迷する市況の中で、今後も暫くは価格の下方圧力が意識せざるを得ない状況。
欧州では新聞印刷用紙の需要減少で、多くの製紙メーカーが段原紙へ転抄、新規参入を行なってきた。しかし計画の中には、コロナ禍による需要回復の遅れなどから、稼働時期の見直し、計画内容の変更、中止を余儀なくされるケースもあった。
スケジュールが後ろ倒しとなったものの中には、稼働が更に来年以降に持ち越されているものもあり、欧州市場では段原紙市況の軟化が今後も暫く続くであろう。
DS Smith、IP/Porcari工場(イタリア、純増分30万トン)・Eren Paper(Modern Karton)/Shotton工場(英国、70万トン)・Hamburger Container(トルコ)・Stora Enso/Langerbrugge工場(ベルギー)

中国香港市況(2-3月度)

[上質紙、コート紙]
中国市場では、コート紙は春節前後に各メーカーが例年よりも長めの停機を行なったことで、需給バランスは幾分改善した。パルプ価格が底を打ち、各メーカーは2月で値上げ(+200元/㌧)を打ち出した。市場価格には幾分底上げも見受けられるが、商業印刷物・雑誌出版需要は依然として低調で、供給過多の状況は変わっていない。上質紙は 春節明け後も目立つ需要は見られず、2月から3月にかけても市場に改善が見られていない。需要の回復ペースは緩慢で、メーカーの示す価格修正は、受け入れの態勢が全く整っていない状況である。

上質紙では、ナインドラゴンが湖北省荊州工場で60万㌧(3月末)、広西チワン族自治区北海工場で70万㌧(第2四半期)の新マシン増産を控えており、今後は更に供給過多の状況が加速することも懸念される。一方コート紙は、ここ数年にわたり増産が行われておらず、構造的な需要の縮小は続いているものの、上質紙と比較すると、需給のバランスはまだ安定している。

香港市場では、上質紙はチェンミン紙業の生産停止の影響で、他の主要メーカーも年末から値上げの動きを見せてはいたが、春節を挟み不需要期も重なったことから、末端価格に動きは見られなかった。3月に入ってからも状況に目立った変化はなく、実需の回復を待つ以外他に方策を見い出せない状況である。コート紙も上質紙同様に、チェンミン紙業の操業停止をきっかけに、他の中国メーカーが年末から値上げが打ち出されてきたが、香港市場ではこれまでのところ、ほとんど受け入れられていない。中国メーカーは引き続き値上げを模索しており、韓国の主要メーカーなど一部の海外メーカーは、パルプ価格の上昇を受けて$20-程度の値上げを打診し始めた。

アジア市場全般には、主要メーカー側それぞれ、値上げの姿勢は変わらないものの、需要の回復ペースは遅く、回復に期待するほかない状況で、今しばらくは、市況に大きな変化が期待できないと見込まれる。

[段原紙ほか板紙]
中国市場では、昨年末にかけて春節に向けた段ボールの荷動きが活発化したことから、段原紙の価格も、昨年9月頃と比べて、1月までの間に300元程度の上昇となった。しかし、春節(1月末)が近づくと荷動きは低調となり、メーカー各社が1月初に発表していた段原紙価格の値上げ(50-100元)は中旬には撤回された。2月の春節明け後も、需要の立ち上がりが遅く、更に原料古紙(OCC)価格の下落もあって、ナインドラゴンはメーカーの先陣を切って値下げを断行した。その後も数度にわたり値下げを余儀なくされている状況で、値下げの動きは、その後3月に入ってからも続いている。特に華南地区の市場では、昨年末に東莞建暉紙業/広西チワン族自治区北海の新工場で、再生段原紙の新マシン2機(計70万㌧)が稼働しており、今後は供給過多が更に加速し、値上げが一層困難となることが予想される。

香港市場では、アイボリーは11月頃までは、価格にも幾分か回復の様子が見られ、その後も断続的に値上げが模索されてきたが、春節前後での低調な市況は春節明けてその後も長引いており、メーカーの意向に沿った値上げが出来ずに推移している。中国のメーカーはいずれも採算が厳しく、生産コストを価格への転嫁が必須であるが、需要には盛り上がりが一向に見られず、実現は極めて難しい状況である。コートボールは、昨年後半に古紙価格が上昇したこと、アイボリーの価格回復もあり値上げの機運も高まったが、一部のメーカーでは増販を優先するところもあり、顧客からの数量条件によっては値下げ対応を行っている

欧州市況(2-3月度)

新聞用紙は、多くの契約が3か月や6か月であり、2月度で価格に変動は見られない。米国による輸入課税を避けるため、カナダのメーカーは、代替仕向け先として欧州市場にも安価な条件でアプローチしており、今後欧州メーカーとの更なる価格競争が予想される。

上質紙は、パルプ価格の再上昇にもかかわらず、各市場では低迷する需要により、価格の下落が進んでいる。一部のメーカーは、限られた需要に増販の意欲を示し、市場価格は下落が進みやすくなっている。メーカーは生産コスト圧力が厳しい中、Burgoは4月からすべての上質紙の価格の7%値上げを発表、Lecta等も追随している。

コート紙も需要が非常に低調で、供給過剰の状態が長く続いている。コート紙全体では稼働率は約75%程度と低水準に留まっており、生産コストの高騰がメーカー側の利益を圧迫している。需要には回復の兆しが見られず、生産能力の更なる削減が、需給バランスを保つ唯一の方法であるが、今のところ生産削減の動きはほとんど見られない。

段ボール原紙は、メーカー主導で、昨年春先から10月頃まで間に累計€100-140程度上昇したが、需要の低迷によりそれ以降は一転し、価格は1月までの間にで▲€100-程度急落となった。Smurfit Westrockをはじめとする段原紙メーカーは、採算性の改善を目的とし、2月より再び€80-90程度の値上げを発表、ユーザー側を驚かせた。欧州ではKLBからTLBへの需要のシフトが進んでおり、ライナーの増産計画も、ここのところTLBが中心となっている。段原紙市況もTLBの動向が左右する状況となっており、TLBの価格の受け入れ状況がKLBへの影響も含めて注目されるところである。

全体的に、欧州市場では価格競争や生産コストの圧力が続いている。各製品とも市況が弱含みで推移する中、市場価格の維持に努めている。

北米市況(2-3月度)

新聞用紙
2024年度の北米市場の新聞用紙域内需要は前年比▲8.9%の100.6万㌧となった。北米メーカーの輸出は同+8.4%の101.4万㌧で、域内出荷を初めて上回った。カナダの工場が北米の新聞用紙生産能力の85%を占めており、米国市場については、カナダへの25%の輸入関税の行方が注目される。関税導入の場合、コストアップ分を価格に転嫁する見込み。カナダメーカーは欧州、アジア市場等への交渉を活発化させている。

上質紙
1月度の米国市場の上質紙需要は前年比▲2.3%の43.5万㌧。輸入は同+42.2%の9.7万㌧で、国内供給を補っている。昨年末のIP/Georgetown工場閉鎖で需給バランスが安定。主要メーカーが1月以降打ち出した値上げは、2月になって$30-程度受け入れられた。

コート紙
1月度の米国市場の上質コート紙需要は前年比▲6.7%の16.6万㌧。景気低迷やインフレで広告ほか商業印刷物の削減が予想され、需要減退がさらに進む可能性がある。一方で、Sappi/Somerset工場の生産停止(1月末)で、上質コートの稼働率の改善は期待される。
カナダへの輸入関税導入で、価格は上方圧力(値上げ、サーチャージ)がかかりやすくなると予想。主要メーカーが2月以降の値上げを発表し、徐々に受け入れられている模様。

中質紙
1月度の需要は昨年1-2月以降で最高レベルとなった模様。北米の中質紙生産の80%以上はカナダの工場からの出荷。2月以降の上質紙・コート紙の値上げ浸透で、中質紙への代替需要が続くことが期待されるが、中質紙の生産稼働率は、昨年末時点で77%と未だ低率にあり、カナダへの輸入関税の行方は不透明で、今後も都度、生産調整を行いながら進められると予想。

段原紙
段原紙メーカーは、昨年度の2度に亘る値上げ(合計$80-100)に続いて、値上げを打ち出し、2月度でライナー、中芯ともに概ね$40-程度の値上げとなった。2月度の段ボール需要は立ち上がりが遅く、3-4月の需要の盛り上がりに期待している。IP/Red River工場(約80万㌧)の生産停止が4月末に予定されており、需給バランスの改善に期待がかかる一方、北米の全生産量の17%を占める輸出は、各市場の景気低迷により減少傾向。1月度の輸出は前年比▲8%の減少となった

【統計】出荷・輸出入・国内需要状況(日本)

2025年1月の紙・板紙合計輸出は12万289トン(前年比5.8%減)、輸入は6万3,181トン(同1.1%減)となった。国内需要は151万7,130トン(同1.2%増)となった。
国内需要の増加が輸出を押し下げる結果となった。

【統計】米国輸入状況

米国の2024年における紙・板紙主要品種の輸入は合計631万6,124トンとなった。そのうちカナダからの輸入は368万4,561トンで金額は349億603万4千ドルとなった。
試算によると、カナダからの輸入額に関税が25%追加された場合、税額は8億7,400万ドルとなり、数量換算で92万1千トンとなる。(数量換算=関税額/輸入単価)
数量換算はあくまでも現在の輸入数量、動向に変化がない場合というのが前提。
実行された場合に、逆に品種によっては米国内のメーカーあるいは工場が稼働率を高め、あるいはカナダから輸入するコスト増に対してコストを抑えることでシェアを増加する、という動きも考えられる。

紙類海外動向レポート掲載のお知らせ

このたび、日本紙類輸出組合・日本紙類輸入組合は業務拡充のため「紙類海外動向レポート」を組合ホームページに掲載することとなりました。

業界貢献として組合有志のご協力を得て、海外トピックス、海外市況、メーカーの動向をはじめとして紙類貿易に関する情報を掲載いたします。